「ちょっと抜く」技に匠を見るラーメン、『麺匠 むさし坊』(武蔵浦和)


つけ麺派になって以来、ラーメンをすすんで食べに行く機会がめっきり減っているのですが、武蔵浦和の『麺匠 むさし坊』へはよく足を運びます。自宅から若干距離があるので、車を走らせ店近くのコインパーキングを使い、食事代以上のコストをかけてまで食べに行きます。


この店、そんな言葉がまだ聞きなれなかった頃から「無化調」をアピールポイントのひとつとしており、自然な旨さが特長です。


はじめてここのラーメンを口にした人は、おそらくほぼすべての人がスープの味に物足りなさを感じるのではないかと思います。スープのベースは鶏で、いわゆる白濁系なのですが、パンチという言葉とは無縁の「ちょっと足りない感」があるのです。白濁するまで素材を煮込んでいますから土台がしっかりしてないということはないのですが、なんというかやっぱり「ちょっと足りない」のです。


化学調味料を使っていないことも足りない感の要因のひとつかもしれませんが、おそらくですね、塩と油が抑えめだからじゃないかなあ、と分析してます。ぼくがラーメンをあまり食べなくなったのは、この塩と油が口に胃にしつこいと感じるようになったからでして、むさし坊のラーメンを好むのはそんな背景があったりします。


前述のように、むさし坊のスープはベースそのものはしっかりしてますので、あっさり味とかさっぱり味とかいうのとも違います。でも「しっかりしてるのにちょっと足りない」、そのバランスが絶妙で、何度も食べていくうちにその旨さ奥深さが見えてくるのです。


特徴あるラーメンというのは、何かと声がでかくて素材同士がスープの中で主張しあうプロレスパターンか、とにかく控えめであっさり薄口のダシで勝負な寡黙職人パターンというのが多いと思うのですが、むさし坊の「しっかりした中にも、ちょっと抜く」技はなかなかにユニークでありまして、貴重な存在だと思います。ちなみにぼくがいつも食べるのはベーシックな『むさし坊ラーメン』(w/太麺、固ゆで)で、卓上にある特製香辛料を少量落としていただきます。こいつは柚子、黒胡麻、豆板醤ほかの素材を独自ブレンドしてあるとのことで「柚子胡椒の黒胡麻風味&麻辣醬仕立て」的なものです。これがなんともスープの味を引き立てるのですよ。すばらしい。


なおぼくがいつも行く店(武蔵浦和店)は、長きに渡る仮設店舗での営業が昨日で終了、2013年4月2日からすぐそばで新装オープンだそうです。たまたまお邪魔した昨夜が仮設店舗営業の最終日というのも何かの縁ですかね。