ずば抜けたミルキー度でもてなす『もち豚とんかつ たいよう』

カウンターだけのこじんまりとしたお店なのですが予約がないとなかなか入れない武蔵小山とんかつ店『もち豚とんかつ たいよう』。東京のとんかつランキングでは必ず上位に入ってくる人気店です。定食屋で予約が必要ってどういうことよ、という反発とも言える思いがあってこれまでお伺いしていませんでしたが、今回は意を決しての予約訪店でありました。


十席にも満たない縦長の店内では、ご主人が一人で黙々ととんかつを揚げています。メニューはきわめてシンプルで、特上とか上などといった格分けはありません。ロースならロース、ヒレならヒレのみです。ぼくはもちろん、ロースとんかつ定食1,650円を注文。客への応対はとても丁寧で好感度高し。落ち着いて食事ができるのは飲食店として何より大切なことであります。


さて、ロースとんかつ定食ですが、比較的大きめのお椀にほどほどの具がおさまった白味噌の豚汁、大根・人参・きゅうりの漬物、そしてとてもおいしいご飯とともに届けられます。とんかつは七枚に包丁が入れらており、見ただけで肉の濃厚さが伝わってくるまずまずの厚みのロースです。


ひとくちいただいて、うむ、これは、濃厚なれど脂のしつこさがないロース、そして、ザ豚肉という香りとは違うまろやかな風味が口の中に広がる、ガツンというよりどっしりという形容が合う深みあるミルキーな味わいが。脂を感じさせないという意味ではかなりの上級ロースとんかつですね。衣にも揚げ油の残党たちはほとんど見当たらず、手入れの行き届いた完成されたとんかつです。個人的な好みで言えば、もっと軽くて色の薄い衣が好きなのですが、十分に匠の技が光った仕上げでした。人気の理由がわかります。


帰り際に、なぜ予約制を取っているのかをご主人に聞いてみました。定食屋は食事をすることが目的で訪れるのであり、特にこの店のようにテーブル席がないような所ではなおさら、予約がないと入れない店は敬遠してしまいます。ご主人によれば、完全予約制にしているわけではなく来店してもらって空き席があれば食事ができるとのことでしたが、遠方から訪れる客からすると、来てみないと入れるかどうかわからないでは行く気が起きないし、来る前に電話確認しないといけないというのはフラリと寄ってみるのが通例の定食屋(普通は一人で、多くても二人で行くような店です)としては面倒なことこの上ないです。おいしい店であれば多少並んででも予約なんてせずに行ける店がいいなあ、と思うのですが、ちょっと感覚変ですかね? 客の回転にはマイナスだしオペレーション的にも効率を悪くしてないかな、などど余計な心配もしてしまいます。


とは言え、たいようのロースは一流のとんかつでありまして、機会があればぜひに、とお勧めするお店です。

もち豚とんかつ たいよう
東京都品川区小山3-22-7 メゾンいずみ 1-112
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