LINEとトヨタの社風を学ぶ


同時期に好対照のふたつの本を読みましたので、その感想を。


シンプルに考える』(森川亮・著)
トヨタの自分で考える力』(原マサヒコ・著)


どちらの自己啓発本も「自分のアタマで考えて行動せよ」という点では言いたいことの根っこは同じなのですが、視点が間逆です。前者の『シンプルに考える』はLINEを育て上げた元社長の経営者目線、対して後者の『トヨタの自分で考える力』は組織としてのトヨタの強さを伝える現場目線です。どちらの本も、自己啓発本として手に取る方が大半だと思うのですが、読み終えてみると「自分のためになった!」というよりも、ぼくには「へー、LINEとかトヨタってそういう会社なんだ」という印象が強く残りました。


シンプルに…』を読むと、森川さんが社長だった時代のLINEのカルチャーがよく伝わってきます。かなり経営者のカラーが立った社風なんだろうな、ということ。一つの信念が会社全体に貫かれていて、その信念に共感あるいは順応できる方にとっては働きやすい事この上ない環境なんだと思います。ぼくはLINEの知人がいないので想像でしかないのですが、著者の言うような「シンプル」をここまで追求するためには社員個人の努力よりもある程度極端な思想とそれを実行するマネジメント力が必要で、従業員数が千人に手が届こうかという規模の会社でこの思想を徹底するには相応のリーダーシップがあったんだろうなあ、と感じました。アイデアの多様性がものすごく尊重される反面、人間とか思想の多様性ってどのくらいある会社なのだろう、と個人的には興味がわきました。

シンプルに考える

シンプルに考える

シンプルに考える

シンプルに考える


一方の『トヨタの…』ですが、さすがのトヨタですね、という内容です。自分で考え、常に改善(変化)を志向し、そして何より実行主義。これが末端まで徹底されているのがトヨタという会社なんだということがよくわかります。この本のもっとも重要なメッセージは「思考停止するな」だとぼくは思うのですが、なぜ?を執拗に追い求める思考を叩き込まれた個々人の力が会社を支え動かしている、リーダーシップとボトムアップがうまく噛み合った、巨大企業としては理想的なアーキテクチャーをしているな、と感じた点がとても興味深かったです。書かれているポイントはすべてごもっとも。自分も含めて、ついついやってしまう思考停止には注意しようぜ、をわかりやすく物語仕立てで伝えてくれます。「もしドラ」を髣髴とさせるコンセプトな同書に若干の抵抗を覚えつつも、就活を控えた娘用にも一冊購入してみました。

どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力

どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力

トヨタの自分で考える力

トヨタの自分で考える力


「自分のアタマで考えよう」本としては、ちきりん女史もがんばっておりますので、関連エントリーを。

自分眼を磨こうぜ、というお話 〜 『マーケット感覚を身につけよう』