素直な気持ちになれる本 『「相対性理論」を楽しむ本』


大学では物理学科に在籍していたなんて過去はちょっと伏せさせていただきますが、ぼくは物理の入門本を読むのが大好きです。あらゆる現象について、なぜそうなるのかを徹底的に追究するのが物理ですが、そんな「なぜ?」という気持ちをいくつになっても忘れたくないので、時折物理の入門本を手に取るのです。数式の出てこない、できれば縦書きの、学問としてではなく教養としての入門本的なものがよろしい。(より正確には、入門書というより紹介書、かな)


物理の世界でおそらく最も一般にその名が知られているにもかかわらず難解とされ正しく理解されていないのは、アインシュタインによってまとめあげられた相対性理論ではないでしょうか。実際、相対性理論に関する入門書、読み物系の本は大変多いのですが、これまでぼくが読んできた中では、どうもしっくりくるものがありませんでした。平易に書こうとするあまりかえってモヤモヤ感が増してしまったり、順序立ててきちんと説明しようとしすぎて途中で小難しくなってしまったり、といった本ばかりだったのです。


そんなときに出会った、これぞまさに「相対性理論の入門本」としておすすめなのが『「相対性理論」を楽しむ本』。ちょっと古いんですが(1998年)この本の良さは、割り切りと素直さ、です。大半の読者にとって「ここはきっちり説明しても理解は難しいだろう」というところはバサバサ切り落としながらも相対性理論のすばらしさについては「四の五の言わすに結果だけ覚えとけ!」という具合にストレートに訴えてくるのです。この潔さがこの本の最大の魅力。その他の相対論入門本て、伝える側(筆者)も受け取る側(読者)も難解な理論であるという先入観で身構えてしまって、素直に書こう素直に読もうという姿勢が足りなかったんじゃないかなあ、と思います。


で、素直といえば、まさにこの相対性理論相対性理論を受け入れるには、明晰な頭脳よりも純真で素直な心の方が重要です。アインシュタイン相対性理論も、奇抜なわけでもひねくれてるわけでもなく、「光速は常に一定」という厳然たる事実を素直に受け入れてみたら、時間や空間が伸び縮みしてることがわかっちゃった、という話なのです。


既成概念や常識にとらわれずに素直に物事を見つめれば、見えなかったものが見えてくる。そんなことを教えくれるのが相対性理論であり、そのことに気付くきっかけを与えてくれる良書が『「相対性理論」を楽しむ本』なわけです。仕事や日常生活でも「素直さ」は大事であります。