アマゾンとマイクロソフトとコンカーの本


少し前のことですが、比較的同時期にアマゾンとマイクロソフトとコンカーという三つのテクノロジー企業に関連する書籍が出版されまして、IT業界に身を置くものとして少なからず興味は持ちましたので、並行して読み進めておりました。最初のふたつは、第三者から見たそれぞれの会社の「今」について、最後のひとつは当事者による書下ろしです。それぞれ特徴があっておもしろかったので、備忘録としてメモしておくことにします。ちなみにこの三社、いずれも本社がシアトルにあるという共通点があります。


アマゾンの本『amazon 世界最先端の戦略がわかる』は、マイクロソフト日本法人の元社長の経歴を持つ成毛眞さんによる、煽りに煽りまくった「アマゾン半端ないって」本。もはや何の会社かわからなくなってきた怪物企業アマゾンをあの手この手でオーバーアクションともとれる筆力で書き上げた汗ほとばしる書です。ただ、大げさな書き方ではあるもののそこにあるファクトについては大きく踏み外してはおらず、アマゾンという会社がどんな性質を持っていて業界業種の壁を破壊しながらいかほどの強大な潜在力を保ち伸ばし続けているかを知っておくにはよい本だと思います。この本を読んで盲目的に「アマゾンすげー」と受け取るのではなく、21世紀のこの世界においてこれほどの破壊者が存在しているということを冷静に見つめ理解するきっかけとするのが良いでしょう。


マイクロソフトの本『マイクロソフト 再始動する最強企業』は、変化や浮き沈みが激しいテクノロジー業界において今なお「最強企業」と呼ばしめるポジションとパフォーマンスを挙げている老舗企業をあらためて見つめなおしてみた本。ぼくの世代からするとマイクロソフトはBASICの会社でありMS-DOSの会社であり、WindowsとOfficeを主軸とするソフトウェア企業という印象が強いのですが、いまや12万人の社員から10兆円もの売り上げを輩出するハード、ソフト、そしてクラウドが見事に融合した大企業であり、今なお「変化」を続けている存在であるということが本書を通じて理解することができます。40年以上にもわたってどうして業界トップを走り続けられるのだろう、ということにほんの少しでも疑問や好奇心を持たれたならば、ご一読をお勧めします。いちおう私も「中の人」の端くれですが、今のマイクロソフトをまんべんなく捉えて表現したバランスの良い書だと思います。


コンカーの本『最高の働きがいの創り方』は、同社社長である三村さんによる「コンカーってどんな会社?」を経営者観点から語った本。働きがいのある会社ランキング1位に輝く同社の「働きがい」はどのような考えに基づきどのような実践を通じて作り上げられてきたものなのか、それを創ったご本人の筆から知ることができる貴重な書です。その中には、成功談ばかりではなく、いかに失敗してきたか、その失敗から学びどのような改善と改革を進めてきたのかがリアルにつぶさに記述されており、著者三村さんのお人柄が伝わってくると同時にコンカーという会社の社風が垣間見えるように感じられます。同社は働きがいという無形のものだけでなく、実際のビジネスにおいても非常に高い成果を上げ成長を継続しているという優れた側面を持ち合わせており、そういったことを含めて「コンカーってどんな会社?」にこたえる本になっています。同様に社員がはつらつと働いているサイボウズというIT企業の社長である青野さんが書かれた『チームのことだけ、考えた。』と比較しながら読むのも楽しいでしょう。


amazon 世界最先端の戦略がわかる

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マイクロソフト 再始動する最強企業

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最高の働きがいの創り方

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