『ワンクリック』 〜 本を読まなくったって十分すぎるほどベゾスとAmazonは魅力的なのに


『ワンクリック』、ようやく読み終えました。サブタイトルに「ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛」とありますが、Amazonについてではなく100%ベゾスの本ですね。


ベゾスって、名前こそ業界内に轟いていますが、そのひととなりについては謎めいていた部分も多かったのではないかと思います。この本でたびたび強調されるのは、彼が驚くほど頭の切れる、天才的なプログラマーであるという客観的なそしてあまり知られていない事実です。MicrosoftAppleGoogleFacebook …、パソコンの登場、普及から始まりインターネットの時代である現在にいたるまで、世の中を変えるほどの革新的なテクノロジー企業を作り上げ、牽引してきた人々はどれも極めて優秀なプログラマーあるいは技術者であるということですね。ジョブズはちょっと特別な存在かもしれませんが。


というわけでベゾスはビジネスの成功者である前にプログラマーなわけですが、彼の独自性は、ただの技術者ではないという点です。商売がわかる、、、というと正確な表現ではないのですが、数学的にビジネスの作り上げ方伸ばし方を理解し実践しているということではなく、どういうふうにすれば人が集まりお金を使うのかということを常に考え、そこで飛び出したアイデアをテクノロジーを駆使しすばやく行動に移せる、そういう人物であろうということです。この行動原理の根底にあるのが彼を語るときによく聞かれる「顧客第一主義」です。ただし彼の「顧客第一主義」は、顧客のことを思いやっていると言うよりは顧客のことを「考えている」、そういうふうに捉えるのが自然だろうということが本書を通じて感じた点です。


ま、あとはですね、滑川さんによる「解説」(p.260〜)があまりにもすばらしい内容なのでそちらを参考になさってください。この「解説」だけを抜き出してプチ書籍化してもお金払いますよ、ぼくは、というレベルです。

滑川海彦さんによる「解説」より
ビル・ゲイツが「あらゆる家庭にコンピューターを送り込む」ことを目標にしたことならって言えば「あらゆる人間のポケットにアマゾンというデパートを送り込む」ことを狙っていると言える。デジタルと現物にまたがった何百万点もの製品を仕入れ、何億人もの消費者に効率良く発送できるノウハウはアップルにもグーグルにもフェイスブックにもない。


本書の後半では、ベゾスが非常に力を入れている宇宙旅行の話、そしてKindleの生い立ちと最新情報にも触れられており、現時点で唯一の「ベゾスのすべて」本かもしれません。

ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛

ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛