『THE MODEL』(ザ・モデル)について ~ マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

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B2Bビジネス、とりわけクラウドSaaS)時代のマーケティング~営業プロセスのお手本となる「THE MODEL」の解説を主題としながら後半には著者の経験を基にしたマネジメント論も展開される、読み応えのある良書です。著者は、日米のオラクル、セールスフォース・ドットコムで要職を務め現在はマーケティング・オートメーションの代表格のひとつであるマルケト(Marketo)の日本法人社長をされている福田康孝氏です。


ぼく自身がこれまでB2Bマーケティング業務に携わることが多かったため、同書の副題にもある「マーケティングインサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」という一連の流れ、プロセスについてあらためて整理してみたい、勉強し直してみたいという思いから読み始めました。(余談ですが、著者のバックグラウンドや本書に登場する各社の関係や全体背景をつかむためにアレン・マイナー氏の序文がとても有効でした)


「THE MODEL」は、クラウド時代の企業戦略、営業戦略、ビジネス戦術そのものと考えられます。市場へのコンタクトから案件の生成、提案活動の推進、そして商談成立後の顧客との継続的な関係づくりまでを全体としてモデル化し、各プロセスにおける担当者・部門の役割や次のプロセスへ渡すための条件などについて詳しく解説が加えられていきます。その過程では、著者の成功体験に裏打ちされたロジックが展開されるだけでなく、理想的なプロセスがサイエンスな視点から描かれていきます。推察ではなく洞察を積み重ねていく著者の思考プロセスをなぞることも本書を読む楽しみのひとつでしょう。


一般的には、各プロセスはそれぞれ異なるチームや部門が担当するわけですから、「自分は営業だ」という人は営業について解説された部分だけを読めばいいのかというとそうではなくて、他のチームや部門がどういう観点でどういう活動をしどんな課題があってどう対応しているのか、などについて知って理解しておくのは自身の役割を務める上でもきわめて有益なことなので、「THE MODEL」として説明される本書を通しで読むことはすべてのひとにとって大きな意味があります。マーケティングインサイドセールス、営業(フィールドセールス)、そしてカスタマーサクセスという業務に携わるすべてのひとに読んでいただきたい書です。


なお本書の中で説明がありますが、「THE MODEL」は "究極の型" として丸コピーするのではなく、これをひとつのモデルとして自社にとっての「THE MODEL」を作り上げていくことがぼくたちが実行すべきことなのだと思います。


冒頭に書きましたが、本書後半はマネジメント論についてページ数を割いています。「THE MODEL」を実行する現場で活動するメンバーのみならず、部門長レベルから経営者の方にとっても一読の価値のある本です。