「SAP本」へのお誘い


2014年、その年末も押し迫った砌、「SAPの"いま"」を伝えることを目指した本が出ました。日経BPビジョナリー研究所さんによる書籍ですが、SAPジャパンの多くのメンバーも参加したちょっとしたプロジェクト(社内コードネーム「エスエーピーボン(SAP本)」)から生まれた、その名も『SAP 会社を、社会を、世界を変えるシンプル・イノベーター』。


まえがきでは、本書はいわゆるIT本や技術書の類ではなく、IT知識がないビジネスマンを想定して書かれたとあります。ところが一方で、上で述べたように「SAPの中の人」が様々な形で支援に入っているということもあって、本書の一関係者でもある自分から見てもなかなかチャレンジングな企画だったなと思います。なぜなら、この手の本づくりにおいては、関係者の関与が大きくなればなるほど「中の人が言いたいこと」すなわち中の人目線での総花的で宣伝調な内容が色濃い書籍になりがちだからです。実際、読み終えてみてそういった面がまったく感じられなかったと言えば嘘になりますが、それでもなお、SAPをよく知らない人、あるいは、知っているつもりでも「SAP = ERPの会社」と思っている方々へは、ぜひ一読をおすすめしたい、そう自信を持って言えます。


この本を読むと、以下のことがわかるようになります。

  • SAPとは何者か (企業紹介)
  • グローバル視点で見たSAPのポジション (どれだけの企業に活用され、どれだけのブランド価値があり、どれだけの「大きさ」の会社なのか)
  • SAPはもはやERPの会社ではないこと (じゃあいま何やってんの?どんな製品やサービス、活動をしているのか、の全容)
  • SAPのビジョン (どこへ向かって、何のために存在しているのか)
  • 会社を、社会を、世界を変革していくためにITが果たす役割やあるべき姿と、そこに対するSAPの考えと取組み、実績 (未来を見通してみる)


本の構成としてはChapter 1から9までという章立てになっていて、順番に読んでいけば上記のすべてがよくわかるようになっていますが、必ずしもChapterの順序にとらわれなくてもいいとぼくは思っています。「SAP」を理解しようとするとき、ぼくならこの順番で読むかなあ、というごく個人的な切り口で各Chapterを整理しなおすと、以下のような5つの「群」になりました。この順で読み進める(あるいは興味のない「群」は後回しにするとか)のもいいかもしれません。


第一群:ERPの歴史とSAP 〜 Chapter 1、5
ITに従事する人なら大なり小なり知っている「ERP」。一方、業界外の方からすると何のことやらいまひとつわからないこのソフトウェアが、非常に明快に説明されています。ERPのあり様を解き明かすことはSAPの理念をひも解く作業とも言え、必読の章です。さらにここでは、SAPの他の重要な側面(サービスビジネス)や、ユーザー企業との愛と厳しさが同居する関係性なども紹介されています。またChapter 5では、SAPのアタマの中を覗き見ることができる「デザインシンキング(Design Thinking)」の説明と実例が続きます。
ERPを起源とする「The SAP」がわかる


第二群:広がるビジネスアプリケーションの世界 〜 Chapter 3、4
ERPやその他のITシステムによって管理される宝の山、大量の「データ」。これを十二分に活用するために近年SAPが拡大してきた事業領域とその価値について解説されています。ビッグデータ、モバイル、アナリティクスといったカタカナで表されるテクノロジーのビジネスへの活用や利用現場での意義について、実例とともに紹介されています。
ERP以外へのSAPの取り組みと広がり


第三群:クラウド 〜 Chapter 6、9
SAP社CEOのビル・マクダーモットによれば、「クラウド」の最もシンプルな定義は「ソフトウェアのすべての価値をサービスとして顧客が利用する方法」とのこと。ソフトウェアの価値をサービスとして提供、利用するクラウドは、単に技術が進化したという話ではなく、ERPが変革してきた企業の業務のあり方をさらにもう一段階高みに上げ、まったく新しい次元でテクノロジーの活用方法を世界ににもたらしました。これらの章では、技術論に偏らず、実業務での価値に焦点を当ててSAPのクラウドを語っています。
☆業務目線で語るSAPのクラウド


第四群:新たなビジネス価値を生む最先端テクノロジー 〜 Chapter 2
ここは他の章と比べて技術色が濃いです。なにせ最先端で超高速なナノでデジタル世界へのいざないを担った章ですので、ある程度は横文字、カタカナが増えてしまうのは致し方ないところ。ただ、ここで語られるSAPのテクノロジー(インメモリー/プラットフォーム)は技術的な優位性だけではなくて、その先進性が業務アプリケーションの効率化や高速化、さらには業務プロセスの変革までも引き起こしていく画期的なものであるという点で、IT従事者にはぜひ読んでいただきたいところです。
☆SAP HANAを掘り下げて縦書きにしてみた


第五群:ありのままのSAP 〜 Chapter 7、8
ここでは、「エコシステム」〜SAP自身のことと言うよりは、ビジネスパートナーや大学、スタートアップ企業との関わりや協業についてSAPの意外な側面もあわせて紹介されています。また、ドイツ発のグローバル企業であるSAPのビジネス文化や、「世界で一番最初にSAPを使っている」自分自身の製品利用とそのノウハウをサービスとして展開する話、さらには社会貢献活動への取り組みなど、バラエティーに富んだ内容でありのままのSAPを理解することができます。
☆SAPの素顔


以上、ご参考になれば幸いです。


SAP 会社を、社会を、世界を変えるシンプル・イノベーター

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