ガチ文系が立ち上げた宇宙ベンチャーの話〜『小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ』

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ひょんなことから最新の宇宙ビジネスについてちょっと調べたくなり(クルードラゴン打ち上げとは関係なく、少し前から気になってました)、アマゾンで解説本的なものを探してみたのですが、これが意外と無い。最も新しいものでも2年前の刊行で、特に変化の激しいと思われる同業界の状況を理解するには古すぎる印象。そこで対象を少し広げて、「事実に基づく小説です」と謳っている今年刊行の本を見つけまして、読んでみました。それが『小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ』という本。

 

読み進めていくとわかるのですが、この本、宇宙ビジネスを題材にしているものの内容的には「業界素人が熱意と根性でベンチャービジネスを形にするまで」の自伝書、でした。読む前は、数ある宇宙ベンチャー起業家の目から見た最新の宇宙ビジネス業界のあれこれに触れることができるかな、と期待していたのですが、ちょっと趣が異なっていました。実際、宇宙の話が出てくるのは(序文を除けば)本を55%ほど読み進めたあたりからでしたので。そこまでは、著者の生い立ちから始まって学生時代に打ち込んだこととか日本の代表的な商社(小説なので架空の会社ということになってますが読めばどこのことかすぐにわかります)に勤務して経験したこと、そしてその商社を飛び出して起業をし様々な苦労を重ねて最終的に宇宙ビジネスにたどり着いたところまでを淡々と綴っています。宇宙商社「スペースBD」誕生秘話、的な。

 

ということで当初の目論見は外れたものの、後半では、コテコテの文系かつ宇宙の知識ゼロの著者がいかにしてこの業界に飛び込み、苦しみ、そして商売の礎を築いたが流れるように描かれていき、参考となる点を所々に見つけることができます。この本を読んでいると、ベンチャーとか宇宙とかに関係なく、社会人として備えるべき普遍的な教養をときには教えられ、ときには再確認させられ、ときには認識を新たにさせられ、自分はXXだからとかうちの会社は(自分の置かれている環境は)YYだから、といった一種の言い訳を持たずに、誠実に愚直に物事に打ち込むことの意義や人生における価値のようなものを感じ取ることができます。そんな筆者の価値観を垣間見ることができるのが以下のような箇所で、印象に残っています。

 

騙されることを恐れて人に心を開かず、失われる機会よりも、人を信じて得られるもののほうがはるかに大きいということだ

 

打算や計算で人と付き合うよりも、誠実な姿勢を忘れずに人と全力でぶつかるほうが、大きなエネルギーが生まれる。

 

結果や目標から逆算して今を考えるのは無意味であり、大切にする「何か」に基づいて、全力で生きた時間の積み上げこそが未来であると、考え方を改めるようになりました。

 

この人(著者)、相当なハードワークを続けてきたんだろうな、ということが手に取るようにわかる彼の半生を描いた「自伝」は、新しいことにチャレンジしたい人、コンフォートゾーン(居心地のいい場所)からあえて抜け出して成長したいと思っている人に勇気やきっかけを与えてくれる本だと思います。

 

小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ

小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ

  • 作者:永崎 将利
  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ

小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ