「所有から利用へ」 〜 カーシェアリングと IT の話


今朝の日経一面に、『カーシェア 普及加速』という記事がありました。カーシェアというのは、レンタカーよりも柔軟な自動車利用サービスのことで、不景気が後押しする形でここにきて注目を集めているようです。この記事が目にとまったのは、こういった発想を転換していくアイデアにいつも敏感でいたいという普段からの思いに加えて、ヘッドラインの中の『新しい都市型の交通システムとして定着することで、「所有」から「利用」へと車の使い方の転換が進みそうだ。』という一文が目に入ったからです。


所有から利用へだって? これ、IT業界では一日に何度も目にする言葉です。所有から利用へというユーティリティー化の流れは、まるで自然の摂理だといわんばかりにさまざまな業界で起きているのですね。IT業界における所有→利用のトレンドは、大きな意味ではテクノロジーと人間の関わり方の変革、現実的なところではコストの削減/有効利用というところに行き着くのだと思いますが、そういう意味では流れはゆっくりではあるが拡散することなくゆったりと "どこかへ" 向かっていると言えます。


一方自動車はどうでしょうか。自動車の場合、それを文字通り「足」としか考えていないひとにとってカーシェアリングは非常に合理的な利用形態である一方、「愛車」という言葉があることからわかるようにそれを所有していること自体がひとつの価値であると考えるひとも多く、そういった人々がコスト面で (あるいはエコ的に??) いま所有している車を手放してカーシェアリングに走るかというとそれはしばらくの間は起きないと思います。現時点で自家用車の必要を感じていない人はもともと車なんて持ってないし、所有しているひとは必要だから ( = 「足」以外の価値を見出している) そうしているという、ごく当たり前のことから考えて、カーシェアリングの当面のターゲット顧客は (1) 車を持っておらず必要なときはレンタルするひと、(2) 車を複数台持っているが維持費を削るために台数を減らしたいひと、(3) ビジネス用途、となるでしょうか。


これ、レンタカー業界は相応の変革が起きる可能性がありますが、車をめぐる社会全体がガラリと変わるほどのインパクトがあるのかと言うと、現時点では疑問です。記事では、『将来は電車やバスなどに次ぐ日常的な交通システムに育つとの見方もあり』とありましたが、どうかなあ、電車やバスやタクシーの方が便利だと思うけど。。。 そういう意味では、IT業界に起きている「所有から利用へ」の流れと、車産業におけるそれとはコトバは同じでも内容は異なると言えます。