SOAと文字のチカラ

私の大好きなドラマ「トリック」に登場する山田里見(野際陽子さん)の名セリフに「これぞ文字のチカラ」というものがあります。IT業界にいると、文字のチカラが間違って使われている場面に数多く遭遇し、疲れます。

最近疲労と感動を経験した例が「SOA」(SOA;サービス指向アーキテクチャ)。仕事柄この言葉に接することが多い(というか、すぐにSOAベッタリになりそうですが...)のですが、どうしてこう分かりづらく分かりづらく説明するかねえ、という文献ばかり。自分でもどうやったら簡潔で、平易で、具体性のある説明ができるかなあ、と思いながらネットをさまよいましたが、難しすぎて、結局なんなのかちっとも伝わらないものばかり。

思うに、書き手がベンダー側の場合、SOAそのものは設計手法みたいなものであるにもかかわらず自社製品との関連性を言わなくちゃいけないので、話が飛んでしまったり本来の意味をゆがめてしまったりする傾向にあるんじゃないでしょうかねえ。

そんな中、さすがという文章を発見。TVJPの栗原潔さんのものです。彼の文章はいつも非常に力強く簡潔で、心の底から感動することが多いのですが、今回もSOAについてとってもよいことを書かれていました。

実際には、SOAの考え方は極めて単純である。ソフトウェアを「サービス」という部品の集まりとして構築しようというだけのことなのだ。このソフトウェアの部品化という考え方はソフトウェアの歴史と共に常に存在する極めて基本的な考え方だ。サブルーチン、共通ライブラリ、オブジェクト指向プログラミング、分散オブジェクト(コンポーネント)などの考え方である。

考え方そのものは古くからあったけれど、SOAでいうところの「部品(サービス)」は従来のものと以下の点で異なる、という視点。

複数のアプリケーションをまたがって共用され得るソフトウェア部品である

さらに、

サービスはビジネスプロセスの一部(サブプロセス)を表現していることが多い

とりたてて斬新なことを書かれているわけではありませんが、私にはとてもしっくりくる表現でした。

書き手がメディア側の方の場合も、栗原さんのように「ぜーんぜん新しい考え方じゃないし、とってもシンプルなことなのにねえ」と言い切ることができずにるケースが多いように思います。しかも、具体性を持たせようとベンダーのコメントを引用し始めると上述の「書き手がベンダー」と同じ状況に陥る。。。

「文字のチカラ」...私が栗原さんの文章で感動するのは、彼が言葉の定義にとてもこだわってらっしゃるように思える点です。人というのは --日本人は特にその傾向が強いのかもしれませんが-- 新しいコト・モトに正対するとそれを既存の何かに分類して理解したことにしがち...と感じています。「分類」という行為は便宜的なものなので、個々の事象の本質を表現するには不十分であり、それに頼るとときには誤解を生じさせます。理解を助ける目的で「まあ、この辺に分類されるんだろうね」という程度がちょうどよいですね。「SOA」でググッて出てきた数々の難解な文章と栗原さんの明快なコトバがえらく対照的で。。。