ノーツの効能(3) - 共有データベースとして

saitokoichi2006-07-31


1995年にLotus Development Corporationはグループウェアやそれをとりまく環境についての見解をひとつの文書にしました。古くからノーツに携わっている方にはおなじみの「3つのC」*1について語ったものですね。転職のときに机を整理しいて、「基本導入パック企画書*2」(この企画書を書かれたA氏は、後年マイクロソフトへ移られました。まだそこにいらっしゃるのかな)といっしょに見つけました。お宝です。薄茶色の60ページほどのちょっと小さめの冊子を、ぼくは大事にしまっておいたんですねえ。

この書物、Communication(メッセージング)、Collaboration(共有データベース)、Coordination(開発フレームワーク)を備えたものがグループウェアなんだと主張しているわけですが、当時「Coordinationが差別化のキモなんだよねー」などと説いていたものの、今思うとノーツはCollaboration部分を具現化する様々な要素が一番のイノベーションだったのかな、と思っています。もちろん、開発環境も大事なんですが。

以前も述べましたが、ノーツが備えているフォームとビューと文書リンクという要素はコラボーレションや情報共有のためのきわめて有能な場を提供してくれますが、コンセプトそのものは決して新しいものばかりではありませんでした。フォームやリンクという考え方は、HyperCardやWebにもありました。ノーツが革新的だったのは、

  • 共有データベースというネットワーク上の場を中心に置いたこと
  • フォームに双方向性があったこと
  • リンクにメタ住所(?)*3を使っていたこと

これ、共有フォルダーではどれひとつ実現できないものですね。.docや.pptは、「文書」ではあるけれど「情報」と呼べるだけの自由度がない。.doc/.ppt⇔人間の間にもう一階層必要なんです。それがフォームであり文書リンクでした。

共有フォルダ/パブリックフォルダによる「情報共有」は、実世界で言う本棚でしかない。図書館で「この本、どこにあるんだっけ」を理解しているのは図書館書士の人だけ。個々の本のインデックスとして使えるのはせいぜい著者、出版社といった程度。それだけでは、本当に必要な情報を効果的に共有している環境とはとても言い切れません。そこを埋めるのはフォームとリンク、そしてリンクなのです。(つづく)

*1:GROUPWARE -- Communication, Collaboration and Coordination 「Communication...」に続く3つの要素の頭文字をもって「3つのC」などと呼ばれていました

*2:当時わかりづらかったノーツを、お安く・簡単にご提供しようという掛け声で生まれた「ノーツこれだけ買っとけ」パッケージ

*3:ノーツの革新機能のひとつ「レプリケーション(複製)」と深く関連。「レプリケーション」は元来、低速な電話回線をネットワークインフラとしていた時代の要請で生まれた機能だと思っていますが、データを物理的に一箇所に置くのではなくより広範囲のチーム間での共有を目指して「複製」を許し、サーバー/クライアントの区別なくそこかしこ置いてしまうという考え方。このような環境下では、各データのポインタを物理的な場所として表現してはダメで、論理的なポインタとして記述することが必要となる。