ノーツの効能(11) - 文書リンクがほしい


つくづく、ロータス ノーツの「文書リンク」はすばらしいと思う。文書 (Web の世界では個々の Web ページそのもの。ブログで言えばパーマリンクで表現される情報単位 (エントリー) ) の場所を指し示すリンク情報というだけなのですが、これがあるとないとでは、仕事の効率が十倍も二十倍も違ってきます。


(1) 文書リンクとは何か
情報のありかを指し示すもの。Web で言えば URL に相当。視覚的には、文集に埋め込むことができるアイコン。ただそれだけ。
すばらしいと思うのは、文書リンクが持っている情報は基本的に「文書ID」と呼ばれるメタ情報だけ*1だということ。物理的な場所 (サーバー名など) はある意味どうでもいい、という考え方。ノーツの文書 (情報の単位。イメージ的には Web のページ 1枚を想像すればよい) には、この世にひとつしか存在しない文書 ID が割り当てられます。文書リンクはこの ID を届けるためのアイコン。
ノーツを普通に使っている企業では、添付ファイルがベタベタ貼られたメールが飛び交うことはありません。何らかの重要な決定事項や多くのメンバーで共有すべき情報がメールで流れることもありません。それらの情報が格納された文書への文書リンクがメールで届くだけです。そのような企業でのメールは、「何かが決まった」、「最新のものはここ」、「ここを見て」といった "お知らせ" (しかもお知らせの中身そのものは含んでいない) 目的だけに使われます。メールはコミュニケーションのツールであり、意思決定や情報共有のためのものではありません。ノーツを使ったことがないと、これに気付かない。(仕方のないことですが)


(2) 文書リンクがあると
ノーツを知らないひとにとっては、なぜそれがそんなに便利なのかがいまひとつピンと来ないようです。実際いまの私の会社でもノーツを使ったことがない方が多く、みなそのような印象です。以下では、文書リンクがあると一瞬で解決されてしまう課題を列挙してみました。文書リンクが直接的に作用するわけではないものも含まれていますが、情報共有やコラボレーションがノーツのような「場所」で行われていれば、文書リンクが個々の情報を指し示すロケーターとして活用され、メールが本来果たすべき役割に徹することできるため、全体生産性が向上するのです。


-メールボックスの肥大化: 多くの企業では個人のメールボックスに容量制限をかけているはずです。添付ファイルをメールで運ぶ文化の会社*2では、平気で数Mバイトのファイルが添付されて飛んでくるのであっという間にメールボックスが制限値を超えてしまいます。加えて、そうった巨大添付ファイルつきメールが流れる宛先が多ければ多いほど、単純掛け算でシステム全体の資源を浪費します。


-メールの整理能力が仕事の生産性に直結してしまう: メールを個人のフォルダーで整理しているケースがよく見られますが、しまった場所を忘れてしまうと大変なことになります。これは、フォルダーによる管理がいかに原始的な情報管理であるかを示しています。フォルダーで分類・管理することは、現実世界でのフォルダー管理や本棚の整理とまったく同じなので、ひとつの情報は一箇所のフォルダーにしか入りません。当たり前、と思うかもしれませんが、「物理的なフォルダーにしまう」ことと「文書に属性 (昨今の Web 2.0 的な言い方ではタグをつけることに相当) を付けておいてカテゴリで階層的に検索できること」は、情報管理あるいは情報共有のやり方が数段違います。ソーシャルブックマークなどでのタグクラウドによる情報の絞込みを体験していれば、一発で理解できますね。


-結局どの情報が最新なのかわからない: メールで意思決定をしたり議論をしたり決定事項の共有をしていたりすると、どの情報が最新なのかがよくわからなくなる、ということが頻発します。毎日のように耳にする「で、あの話、結局どうなったの?」(メールを注意深くじっくり読めばわかるのかもしれないが、それが大変)、「あの件、xxxさんからコメント入ってたよね。それは反映されているの?」、「え、このメールに貼り付いているファイルが最新じゃないって? じゃ、最新のはどれなのよ」といった会話は、ノーツがある世界では起きません。


-メール上でディスカッションが始まってしまって誰がどれにコメントしたのかを追いかけるのが大変: "参加者" がきちんと順序を守って発言してくれればまだマシですが (それでも、議論を順番に見ていかないといけないので大変だけど)、現実にはそう簡単にいかず、複数の人が並行して発言たりすると大変。メール上で議論を追いかけるのに大変疲れます。議論はメールで行わず、電子会議室のような場所でやった上で、決定事項のみ文書リンクを貼り付けたメールで連絡するようにしましょう。


-データの分散管理が大変: 負荷分散のために同じ情報を複数のサーバーに置いておいて都度負荷の低いサーバーへ接続させるといったネットワーク設計はよくやることです。ノーツで持っているレプリケーション (複製) 機能を使えばこれが簡単に実現できますが、文書リンクは物理的なサーバーの場所を意識しないので、こういった環境とも親和性抜群。他方、ファイルサーバーや Web サーバーによる負荷分散はサーバー側でこれらのサービスを吸収しなくてはいけないし、なにより、クライアントへのレプリケーションができないのでオフラインユースには対応できません。文書リンクなら、その文書がローカルにあるのかサーバー上なのかすら意識する必要がありません。


以上。ああ、ノーツを使いたい。。。

*1:厳密には、そのリンク情報を取得したときのサーバー情報も保持していますがこれはあくまで補助的なものであるし、プログラマーから見ればもっと様々な情報を持っているんだと思います。ここでは一般ユーザーが使う情報の範囲で話を簡略化しています

*2:残念ながらわが社もそうですが