ノーツの効能(12) - プロジェクトルームであり駆け込み寺であり


私が現在勤めている会社では、航空機利用の際はエコノミークラスの利用が社内規定上の基本ですが、年間の長距離出張が定められた回数を超えるとビジネスクラスを利用することが認められています。今回、まさに私はこのベネフィットを使って久しぶりのビジネスクラスでの移動となりました。あいにく行きの便は3列席の真ん中ですが*1、リクライニングシートは快適だし、席に AC コンセントが設置されているのがうれしい。


...と、このエントリーを書きながらふと右横の外人さんの PC を覗くと、使っているのはロータス ノーツではないか! おそらくバージョンは6、メール文中にちらっと見える文書リンクがうらやましい。


先日わが社はとある新製品 (ソフトウェア) を発表しました。機能面、売り方の面、さまざまな点において私たちにとって初めてとなる製品です。この新製品、日本語版の出荷時期がまだ決まっていないということもありほとんどすべての情報は英語でのみ提供されている状況なので、社内外から問い合わせがよく入るわけです。この手の海外先行製品の場合、英語の情報をそのまま社内外の日本人に公開してもあまり意味はありません。必要な情報、意味のある情報が選別されていないからです。なので、必要なのは、日本市場においてどうなんだということを整理した上で情報を流すアレンジメント役です。彼/彼女の仕事は、日本での出荷までのスケジュールはどうなんだ、日本向け追加機能はあるのか (あるいは逆に使えない機能はあるのか)、パートナーとのビジネス協業はどう考えればいいのか、といったことを考えつつ市場投入のタイミングを見定めながら無駄のない情報の流し方をその時々で計画し実行することです。「情報統制」というとネガティブに聞こえてしまうかもしれませんが、不適切な情報を省き、本当に必要な情報だけをより正しく理解してもらうための、重要な役割です。


さて、そういった "統制された" 情報はいったいどうやって社内外と共有するのがよいのでしょうか。市場投入時期が先であればあるほど、当該製品の関係者は少なく、きっちりした体制を敷くことができません。が一方で、投入時期から現在から遠ければ遠いほど的確な情報統制をしていないと社内外が混乱するし、逆に提供する情報が不足していると同じ問い合わせを毎度毎度さばくという非効率なオペレーションを強要されます。


もう結論がミエミエですが、こういうときインフラにノーツがあると便利なんですよねー。情報の登録 (文書化) も簡単、分類も簡単かつ柔軟、添付ファイルもいっしょに保管できるし、縦横無尽にリンクを活用できる。しかもそのまま Web へパブリッシュできる。ノーツのない世界では、まず添付ファイルのついたメールが飛び交います。少し気の利いた人は共有フォルダーを活用しますが、フォルダーの欠点は物理的なフォルダーと同じで格納した場所を忘れてしまうと情報の在り処がわからなくなってしまうこと。リンクが書かれた「お知らせメール」を無くてしまったら、もうどこに何があるかわからなくなります。(そのメールを無くさないようにするのも大変) フォルダーできれいに整理したつもりでも、完璧な整理法というのはないので、「あれ、どっちのフォルダーだったっけ」ということは普通に起きます。


ある時から、ぼくはノーツをプロジェクトルームと思うようになりました。今回のケースで言えば、新製品の名をつけたデータベースを用意して、その新製品関連の情報はすべてそこにある、とだけ利用者は記憶しておけばいい。探し方は多様 -- 複数切り口のカテゴリーで探すのも、全文検索するのも自由。時にはプロジェクトルームの中でディスカッション(会議)が展開する。「駆け込み寺」とはこのことか。要は「これどうなってるの?」、「そもそも何?これ」、「最新の情報はどこかにないの?」といった要求にバッチリ応えられる部屋がノーツなのです。しかるべき体制が敷ければ、イントラネットで情報共有、なんてことはでるのかもしれませんが、情報作成者と発信者(たとえばコンテンツを Web に乗せる人とか) が "どちらも自分" であるような体制では、これはままなりません。Wiki? まあ、いいと思います。ただ表現力に欠けます。ノーツはほんとにちょうどいいバランスを持っている。テキスト + 添付ファイルの範囲であれば Wiki でも OK だけど、ノーツにある表組みやセクションなど、テキストエディターとワープロのちょうど中間を行く絶妙の表現力は、使ってみないとわからないかもしれません。閲覧権限の設定も超簡単かつ細かく指定できるのも大変重宝します。


"emerging な" コラボレーションには、ノーツ。これ常識。

*1:何気に左隣は某有名男優俳優さんでした。