『ストーリーとしての競争戦略』について

それなりに売れた本ですしこの手の書籍の古典として扱われていることもあるので読まれた方も多いと思いますが、12年前に刊行された『ストーリーとしての競争戦略』という本を "積読/ツンドク" の山からマイニングしてきまして2回ほど読んでみました。競争戦略とはスナップショットの分析の積み重ねや相関関係による推論の組み合わせだけではダメ(浅い)で、因果関係がストーリーのように連なっているべきものである、という著者の持論を冗長かつ長文でまとめた本です。この「冗長かつ長い」という部分は著者もわかっていてあえてそうしているところがあって、なぜそうなのかは読んでいただくとわかるのですが、また、後出しジャンケン的な要素も感じないわけでもなく、あ、これも読んでいただくと著者は承知の上でそうしていることが理解できますが、総じて言えば、戦略というものは「なぜ」を追求していかねばならぬというところに行きつくのである、と著者は言いたいのだと思います。

 

競争戦略はストーリーになっていなくてはならない、という点は、大いに納得できるものですが、一方で、ストーリーは必要条件ではあるものの十分条件ではない、というのがこの手のビジネス指南書のまとめ方の難しいところです。その点を著者は、この本は「こうすれば必ずうまく行く」というテンプレート(成功パターン)的なものではないと言いつつ、かつ、成功例をベストプラクティスとして並べてそれを真似てほしいわけでもない、と明言し、一見すると「但し書きつけて逃げ道作ってるだけじゃん」と感じてしまうのですが、これまた読み込んでいくとわかるのですがこの点についても著者は左記のような指摘を受けるのを理解したうえで、各々の企業が置かれた環境や自社のポテンシャルやコア・コンピテンシーをじっくり見つめて、そしてよく考えて、企業ごとに異なる「ストーリー」を「なぜ」を追求することによって作り上げることこそが成功戦略を描くための条件なのである、と説いているのだと思います。

 

というわけで、冗長で長い同書の言わんとしているところは、結局のところ、「成功のための必勝パターンや他社の成功事例を安直にまねようとせず、自分の頭でとことん考えてそこにストーリーを見いだせ」というメッセージなのであります。そりゃそうですよね、必勝パターンや成功事例のコピーなのであればそれは他社も実行可能なわけであって、競争優位性にはなりえないわけです。

 

企業戦略が本書のテーマではありますが、この「ストーリーを重視する」(=動きのあるダイナミックな戦略を!)という考え方は、企業体という枠にとどまらず、営業戦略、マーケティング戦略、パートナー戦略といったより細分化された分野にも適用できると思いますし、逆に、業界戦略(という言葉あるのかどうか知りませんが)や国や世界をより良いものにしていこうというときにも基準とすべき姿勢なのかもしれません。そういう意味で、自らの業務にも参考になりますし、日常生活においても人生を良く生きるためにストーリーを大事にするという姿勢を持っていることは意味のあることだな、と感じました。

 

ストーリーとしての競争戦略 ~Competitve Stragegy  as a narrative Story~ CSaaSといったところでしょうか。