お寺の鐘と音叉の共鳴を知る『マキコミの技術』


『マキコミの技術』は、3年以上前に書かれた『クチコミの技術』に対してその後の技術の進歩、市場の変化を反映した「差分アップデート」のようなものです。ですから、『クチコミ…』を読んだ人はこの本の内容がすーっと胸に入ってくるでしょうし、逆にこの本から入った人は本屋で『クチコミ…』を手に取りたくなるというサイクルが自然に起きるようになっています。対象としている読者は、ブログやツイッターを活用しようと考える企業担当者。


両書に共通するのは、マス一辺倒のマーケティングとは性格の大きく異なる「クチコミ」や「マキコミ」(”マキコミ”が何であるかは本書を読みましょう!)によるユーザー主導なマーケティングを企業担当者がどう捉え、どう行動すべきかを説いている点です。その手法は、高いところから講釈を垂れるのではなく、筆者が現場で出会った事実や実践者へのインタビューを通じたリアルな「体験」をベースにした語りであり、頭で理解するというより胸で感じる本となっています。


そういう意味で、知識を得ることだけが目的なら他の「ソーシャルメディアをビジネスに…」みたいな本を探した方がいいのかもしれません。逆に、直接的なROIが測りづらく結果がすぐに出てこないこの手のマーケティング方法論を「信じたい人」あるいは「納得感を得たい人」へはぜひおすすめしたい本です。


個人的に興味深かったのはFacebookへの言及が少なかったことですね。その答えはこの本を読んでもわからないのですが、ぼくはFacebookというサービスは企業による利用という観点ではマスとソーシャルの中間(ややマス寄り)にある存在と思っており、この本の趣旨とは近いようで微妙にずれている、と感じました。それに、オープンでないという点でもFacebookはブログ、ツイッターとは性格を異にしています。


クチコミにしろマキコミにしろ、成功の鍵は企業がどのような「人間として」ユーザーと関わりを持っていくかという点に尽きます。担当者に任せっぱなしではダメ。会社としての取り組み、姿勢が成功に直結するという意味で武器にも毒にもなるのが企業のソーシャル活用なわけですね。


マキコミの技術

マキコミの技術