『ソーシャルメディア・サミット 2011』へブロガーとして招待いただき、参加してきました。…って、開催は一昨日のことでして、今ごろレポート書くなんてまったくスピード感ないですね。ほんとすみません。(言い訳はしません)
すでに、参加された方によるブログ、ネットメディアによる詳細なレポート記事がたくさん出ていますので、ぼくからはこのイベントを通じて得たものをちょっと違った角度からまとめてみたいと思います。ずばり、『アウェーな企業担当者から見たソーシャルメディアの今日と明日』(長くなりましたが分割しませんでした)
主催社代表の徳力さんがイベント開催前にブログに書かれていましたし、当日開会のあいさつでもおっしゃっていたのですが、このイベントは「ソーシャルメディア成功のノウハウ」を学ぶ場ではなく「そもそもソーシャルメディアって何?」ということを徹底的に議論する場でありました。イベントタイトルから前者を期待した企業担当者諸氏は開会の瞬間からなんとなく「アウェー」な空気を味わっていたことと思います。ちなみに会場で最初に「アウェー」発言をしたのは最終セッションに登場した津田大介(@tsuda)さん。もっとも、津田さんの使った意味は逆でした。会場で予想外にスーツ姿*1が目立ったため津田さん自身がアウェーな感じ、という意味の発言だったのです。たしかに(この手のイベントとしては)数的にはスーツが多めで会場の空気やノリは"エンタープライズ感"が微妙に流れていたかもしれませんが、内容的にはやっぱりスーツ族の方がアウェーだったと思いますよ。
さてそんな調子で始まったイベントですが、アウェーな企業担当者に役立つ情報という視点から印象的だった言葉を並べていきます。
"ミクシィは数十人の「プライベートグラフ」を作る。グリーはコミュニケーション総量の最大化が幸福条件と考える。ツイッターはメディアでありコミュニケーションツールでもある"
ソーシャルネットワークサービスを提供する3社*2がそれぞれのサービスの特色を説明。各社各様な特徴とビジョンを持っているので、企業担当者がキャンペーンを企画する時の参考になりますね。ちなみにFacebookさんにも声をかけたけど断られちゃったそうです。(「忙しいんですよ」という徳力さんの大人の解説つきw)
ミクシィの辻正隆さんは、昨年末から「実際の知人」のつながりにこだわってきたとのこと。昨年末にデイリーのアクティブユーザーが100万人(!)という「mixi Xmas」の事例を引き合いに、知人だからこその強い結びつきを活かしたキャンペーンの例と説明してました。Facebookの今後の活用にも参考になりそうな話です。
グリー伊藤直也さんが「ネットが浸透した時は "何を言ったか" が重要だったけどソーシャルメディアの発展によって "誰が言ったか" という、ある意味ネット以前の状態に戻った感じ」とおっしゃっていたのが印象的。ただ、今の状況がネット以前とイコールになったのではなくて、「誰が」がフラットに存在している点がネットならではだとぼくは思います。「どこの誰が」じゃなくて単に「誰が」ということですね。
"「企業からのメッセージ出し→ユーザーがコメントつける」という形がくずれてくると状況は一変する"
ブランドとしては決して有名でなかった『satisfaction guaranteed』をFacebookページ(旧名:ファンページ)を活用して「参加者によるブランド作り」を実践したエスワンオー佐藤俊介さんの話。たとえばツイッターの活用を企業が考えた場合、市場でのブランドのプレゼンスがフォロワー数に直結するため無名ブランドはなかなか厳しい。ところがFacebookは何か違う、というご意見。ちなみに無印良品の風間公太さんも「参加者が作る」という点で似たようなことをおっしゃっていて、曰く「参加者が15,000人を超えたあたりから(企業メッセージへのコメントではなく)参加者が勝手に投稿を始めた」とのこと。
"ポジティブなコメントがほとんど"
Facebookの場合は実名制をとっていることもあって、ネガティブなコメントはあまりつかないというのが登壇者の共通認識でした。Facebookページを立ち上げることを考えた場合、企業のコールセンターにかかってくるクレーム電話が頭をよぎるために、「ユーザーからの反応=ネガティブ」という図式でとらえがちだけど、そんなことないよ、というANA高柳直明さんの話。
"連携したいですねー"
Facebookページを活用されているお三方が口をそろえておっしゃった言葉です。企業間のFacebook連携をやりたい、ということなんですけど、そういう感覚を持つようになるっていうのは興味深いですね。「つながりが価値」のソーシャルメディアならではでしょうか。
"サービスとしてはソーシャルメディアだけど活用する側からするとペイドメディア"
キットカットリニューアルキャンペーンについてネスレ揖斐理佳子さんのお話。成功にはそれなりにお金もかかるよ、ということかな。もちろん一概には言えないし、プレーンなFacebookページを活用して地道にネットワーク作っていくという方法もあると思いますが、強烈なインパクトを与える短期的キャンペーンはそれなりの投資が必要ということでしょう。
ユニット・ワンの勝部健太郎さんが携われたコカ・コーラで「スゴイ自販機」や、ローソン白井明子さんが紹介されていたツイッター+エヴァwith AR(拡張現実)、ONE PIECEなどをからめたキャンペーンも、相応のお金はかかってます*3ね。ただし、それじゃ旧来のメディアと同じじゃん、とはならなくて、ユーザーの「生活動線」の中に上手にはめ込む設計ができれば「繰り返し」が起き、それほどお金をかけなくても効果を出せる可能性があるのがソーシャルメディアの魅力、という勝部さんのコメントも印象的。サントリー坂井康文さんが紹介されていた、「おねだりボーイズ」を巻き込んだウイスキープロモーションのブログメディア事例などは低コストで実現できた例でしょう。「ブロガーは未来のお客様の鏡」という趣旨の発言をされていました。
"使ったことない人への説明はやっぱり難しい"
ソーシャルメディアに理解のないマネジメントをどう説得するかの決定打はなかなか見つからないみたい。ちょっとしたことの積み重ね、たとえば報告はマメにするとか、メディアに取り上げられたらそれを強烈に(笑)アピールするとか、、、ただこれは事後の話ですね。成し遂げたいことの軸をぶらさない、道具(この場合ソーシャルメディア)に振り回されない姿勢が大事という話も出ました。効果測定についてはTweetmanagerを使ってやってます、という話は出たものの、それ以外ではソーシャルメディアならではという評価方法はまだ模索中といった印象。
"社内営業は重要。相乗りのススメ"
「企業担当者へのアドバイスは?」という問いかけへの回答。どれも実践者の重みのある言葉ですね。
- 「ネットはまだ新しいメディアなので、社内への説明、根回しといった社内営業が不可欠。あと、仲間を増やしましょう」(サントリー坂井さん)
- 「ゼロから始めようとすると説明が大変だったりハードルが高いので、他の企画に相乗りさせると比較的やりやすいのではないか」(ローソン白井さん)
- 「ソーシャルのトレンドはもはや先進企業だけのものではない。そういう自信を持って取り組むとよい」(ユニット・ワン勝部さん)
さて。ここから先は、最終セッションの『ソーシャルメディアはウェブの何を変えるのか』についてなのですが、話が本質すぎるのと、登壇者のキャラが濃すぎてみな言いたいことを言い放つという予想通りの展開になったため(笑)、"企業担当者のための" という視点をうまく入れられていません。あしからず…
"ツイッター納豆論と動員の革命" (津田さんによる勝手基調講演w)
ネットによって「やる気があって主体的に行動できる人」がどんどん勝手に飛び出して革命を起こしていったけど、ソーシャルメディアによってそこに他の人がくっついていく(追いかける)ような現象が起きている。これをツイッター納豆論と呼ぶ(会場爆笑) かき回せばかき回すほど味が出てくる。→たぶん、他の方がもっと上手なまとめをされてると思うのでぼくはここまで。
続いて津田さん、ここのところ起きている(と、言われている)ソーシャルメディア革命について言及。ソーシャルメディアそのものが政治的な圧力なのではなくて、実際の圧力はあくまで民衆。民衆が圧力を発生させるきっかけを作ったのがソーシャルメディアである、と。活動への「動員」、つまり背中を押したという意味で、ソーシャルメディア革命は動員の革命であるという論です。津田さんは「でもUstreamなんてテレビに比較したら見てる人すっごい少ないじゃん、という指摘はナンセンス。"物理的に集まる"という行為を拡張し増幅させるのがソーシャルメディアなので、マスメディアと比較しても意味がない」という持論を展開されてました。
さらにこの話は、「動員」の先にはマイクロペイメントの掛け算が待っていて、社会運動の効率化とかNPOのモジュール化などにつながっていくよねー、という話へと続きました。
"賛成運動しよう" (佐藤尚之さん/さとなお)
ご自身のブログで振り返ってらっしゃったので、当該エントリーへのリンクを張ります。(手抜き?)
ディスカッションの後半、津田さんによる「Facebookは賛成ばっかりでキモい」という問題発言あり(笑)
"これはカネになる、と言い出したときからネットがおかしくなった" (森永真弓さん)
この森永さんの発言にかぶせて、さとなおさんが「かつてはネット担当者は楽しんでたんだけど、そこへ旧来メディアの連中がドヤドヤ入ってきて旧来文明に作り変えてしまった」というコメントがありました。上位下達、一方向、メディアの権威、そんなもろもろの旧来型の発想がユーザー不在のメディアにしているように思う、というお話です。
"プライバシーをさらすことのおもしろさがわかっている世代" (小林啓倫さん)
一時、実名匿名議論が盛り上がりそうになったところで出た言葉です。プロフなど実名を出すことに抵抗のない世代はプライバシーをさらすことで楽しんでいる、というご意見でしたが、森永さんが「実名オッケーな子たちはネットにつながっているという意識がないんですよね」と分析。これは楽しい面と危険な面双方を持ち合わせていると個人的には思います。
そんな話の流れに「ソーシャルメディアは混浴(風呂)だ」説を投入したのがさとなおさん。ずっと布で隠してたんだけどある日誰かが全裸になり、それが広がっていくと隠している方がはずかしい状況になる、っていう話なんですけど、例えがちょっと乱暴だったかな(笑)。でも、おっしゃりたいことはわかります、はい。
"ソーシャルメディアを親に使ってもらおう"
セッションの最後にみなさんから一言ずつ。
- 小林さん: MIT教授の言葉に「情報は流れたがっている」というのがある。流すことによって情報の価値が増し、情報自身が"喜ぶ"。ためこんじゃだめ、ブログやツイッターを書くもよし、「いいね!」ボタンを押すもよし。
- さとなおさん: 年齢を重ねるほどに孤独が増していく親の世代に、ソーシャルメディアをぜひ教えてあげよう論。きっと救われる。孤独から違う方向へ財力や行動をシフトさせてあげよう、という話。(パソコン教室でパワポとか教えてないでソーシャルメディア教えればいいのに、という森永さんのコメントあり。まったくそのとーり!)
- 津田さん: 賛否両論の可視化がツイッターによってもたらされた。反対意見とかフォロワーが減るとか気にしないでどんどん発信しよう。言いたいことを飲み込むな!→そして最後に「Facebookキモい」発言で会が終了(笑)
非常に楽しいイベントでした。内容が盛りだくさん過ぎて、話されていたことの100分の1くらいしか書けませんでした!
当日の模様がムック本になったりしないかな。。。
参考:
主催アジャイルメディア・ネットワークによるイベントレポート
http://agilemedia.jp/blog/2011/02/post_243.htmlネタフルによる会場からのリアルタイムレポート(すごい!)
http://netafull.net/report/037049.html