「後ろ倒し」って何だ

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 NHKのニュースを見ていたらアナウンサーが「後ろ倒し」という表現を使っていたので、おやおや後ろ倒しって標準的な日本語としてアリになったのか?と不思議に思い、ちょっとメモ。


物事を予定より早めに完了させることを「前倒し」と言いますが、その対義語的に「後ろ倒し」という表現を耳にするたびに、そんな日本語あるのか?、といつも違和感を持っていました。実際、広辞苑にはそのような言葉は見当たらないそうですし、前倒しの反対語は「先送り」や「後回し」だと思っていたので、後ろ倒しって奇妙な言い回しだなあ、と常々感じていたわけです。

 

で、後ろ倒しと言及したNHKにも言い分があることをFacebookで教えてもらいまして、読んでみました。

www.nhk.or.jp

 

この説明によると、後ろ倒しという言い回しは、実質的には先送り(=設定した期日に間に合いそうもないので期日を先延ばしにした)なのに「先送り」という言葉の持つネガティブさを ”中和" するために政治家や官僚が編み出した高等表現のようです。やろうと思ってて間に合わなかったことを棚に上げていかにも予定通りですと言わんばかりの「後ろ倒し」なわけですね。なるほど、この言葉の持つ気持ち悪さが納得できた気がします。

 

一方で同じ記事では、「前倒し」という言葉自体も古くから存在していたものではなく、1973年ごろに生まれた官僚俗語であると説明されています。そうか、自分が小さな子供のころからあった言葉なので違和感感じなかっただけなのか。。。「前倒し」=予定より早く終わるんだから良いこと、「先送り」=期限を守れなかったのだから悪いこと、というイメージも実は必ずしも正しくはなかった、ということになります。ことばは生き物だ。

 

ちなみに、業務アプリケーションの世界では「後ろ倒し」も「前倒し」もどちらも一般的に使われているようです。生産管理の世界において、もともと予定されていた予定を変更する際の用語として1990年代から使われていたとのことでした。