SaaS ではないもの


SaaS と言ったり「オンデマンド」と呼んだり、その言葉を使う人の思いによって微妙に表現が変わることはありますが、自社施設にシステムを導入し運用するという通常のITシステムではなく、他人が運用管理するシステムを「サービス」という形で利用するという動きが徐々に広まっています。現時点では、全 IT システムの中に占める SaaS やオンデマンド型サービスの割合がまだまだ小さいので気にする人は少ないですが、上述の「通常の IT システム」が "通常の" ではなく特定の名前で ("特別な" ものとして) 呼ばれる日が来るのも近いかもしれません。


「通常の IT システム」から SaaS/オンデマンドへ商売を広げようとしている人々は、それを「on premise」(直訳すれば、「構内の」とか「屋内の」というような意味) と呼ぶようです。いや、IT一般用語として浸透しているかどうかは知りません、ただ、私の勤める会社やオラクルなどはこのように表現しています。英語上は、「on premise」と「on demand」という具合に、"on 〜" という対比でシンプルに表現されるのでいいと思うのですが、少々困ってしまうのが日本語でどう表記するか、という点。


「オンデマンド」は、カタカナのまま受け入れられているようですが、これは「デマンド」という単語が日本人に比較的なじみがあったことが理由として大きくて、「on premise」はそうはいかないんじゃないかと思っています。こいつをカタカナで書くならば、「オンプリミス」(またはオンプリマス) となり、かなり取っ付きづらい。IT業界で仕事を始めたころによく "噛んで" しまった経験のある「プロプライエタリ」よりさらにタチが悪いのでは、と思ってしまいます。


バズワードとしてベンダー側が意図的に定着させてしまう、というやり方もあるかもしれませんが、個人的には「premise」なんてわかりづらい言葉をカタカナにして使うのは良いことだと思いません。(私の経験上、外人とのフツーの会話に "premise" が登場するのは「on premise ⇔ on demand」という今回の意味においてのみであり、それ以外では聞いたことがありません) それでも、業務上日本語訳を用意しなくてはいけない場面に遭遇した場合、いまのところは「自社設置型」などと言い換えることにしています。もう少しやわらかい言い方はないだろうか、と考えてはみるものの、あまりいいアイデアが浮かんできません。むしろ、思い切りシンプルに「インハウス」と言い切ってしまいたいところですが、何か不都合があるかなあ。