早子先生、よかったよ。


今クールのテレビドラマ、結婚とか恋愛をテーマにした秀作が多かったですが、『早子先生、結婚するって本当ですか』が頭二つくらい抜けてすばらしい作品でした。大野くんと波瑠のすべてがとてもよかった『世界一難しい恋』(波瑠は朝ドラで才能開花したんですかね、胸にしみこんでくる演技をします)はまじめに人を愛することの難しさをコミカルな中にも実直に伝えていてなかなかよかったし、ふたりの主役は今ひとつ演技がいけてなかったけど話の展開とテンポが絶妙だった『私結婚できないんじゃなくて、しないんです』は結婚は目指すものではなく過程でありゴールではないということを一歩引いて表現していてこちらも良作だったと思うのですが、フジテレビらしからぬ古き良きホームドラマ色調の『早子先生』はとてもよい作品で、毎回涙腺が緩みまくりでした。


テーマとなっている「婚活」から想像されるイメージとはちょっと違う地味な登場人物それぞれにストーリーがあって、「結婚」ではなく「結婚生活」に、自分の人生ではなく相手の人生に、想像力と思いやりを持って正面から向き合うという姿勢が貫かれたシナリオに、胸を打たれるんですよね。役者もみなすばらしい。貫地谷しほりの名女優ぶりはいうまでもなく、心配していた主演の松下奈緒も予想を裏切る名演だったし、脇役陣もみな個性的で、尾藤イサオ松坂慶子の夫婦漫才はいつも心温まりました。視聴率はパッとしなかったようですが、あまりにも地味なストーリーとスター俳優不在な話題性の低さが災いしたんですかね、作品としては役者さんとスタッフ、関係者の一体感を感じる上級な仕上がりだったのに、企画面での戦略ミスだったのもしれません。惜しい!


結婚は、ふたりの違う人生を歩んできたもの同士がひとつになるという意味で、1+1=2、なんだけど、右辺はただの2じゃなくて、2/1(いちぶんのに)なのだ、と最近思います。ふたりの人間であることに変わりはないんだけど、単に一緒に暮らしてるってだけじゃなくて、分母の「1」が大事。ふたりがひとつになるってことは大変なことでもあり、実はすごく簡単なことでもあったりするんどけど、そのあたりの悩みや葛藤や矛盾が、分母の1に凝縮されるわけです。『早子先生』には、分母の1が自然に描かれていたと思います。だから心打たれたのです。