Google Waveのすばらしさはどこにあるのだろう?

saitokoichi2009-11-02



5月に姿をあらわした Google の野心作、「Google Wave」。限定されたテスター向けの ID 発行数も徐々に増え、私も ID を持つ幸運を得ましたので少しいじってみました。


従来のどのサービス、製品にもピッタリはまるものがないため、Google Wave (以後、「Wave」と略記) とは何かという問いに答えるのはたいへん難しいことなのですが、見た目 (Wave クライアント) からあえて乱暴に表現すると、「メールとインスタントメッセージングと Wiki が一体化したような新しいコミュニケーションツール」。その使い心地を一言で述べるならば、「メール本文が他人とリアルタイムかつ編集可能な状態で共有されている感覚」です。


このリアルタイム感は、正直言うとあまり気持ちのいいものではありません。従来私たちはメールとチャット、そして文書共有のための Wiki といったものはそれぞれ使い分けていましたから、それらがリアルタイムに融合した世界には相当の違和感を感じるのです。Google がお披露目デモの中で盛んに強調していた「目の前で他人が編集しているのが見える」や「リアルタイム翻訳」なども、第一印象こそ「すごい!」という印象でしたが、それは単に実現技術に対しての感動であったことにほどなく気付きます。


私の違和感はおそらくふたつの理由から。ひとつ目は「リアルタイムの度が過ぎる」と感じる点。これはもしかすると慣れの問題なのかもしれませんが、私たちの脳とコンピュータの論理構造はまったく異なるため、脳とツールを完全にリアルタイム結合すると人間側に余計な負担がかかってしまうからではないか、と想像しています。違和感の原因のもうひとつは、複雑性。Waveはシンプルではないのです。これは使い勝手だけの話ではありません。Wave を支える技術は Google App Engine の中に密閉されてオープンにされていません。外部インターフェイスはありますが、内部では相当アクロバティックなことをやっていることが伺えます。昨今のネットあるいはクラウドのトレンドを見ると、シンプルなものが幅広く受け入れられているという印象がありますが、利用者や開発者が複雑性を感じてしまうツールで大丈夫なのかな、と心配になります。


以上は主に、Wave クライアントから見た第一印象。Wave は「Product」、「Platform」、「Protocol」の側面があると説明されており、上記はひとつ目に限定したコメントです。Wave の構成要素が他のサービスと組み合わされる世界が果たしてどういったものになるかは、情報が少ないためにまだなんとも予想がつきません。Waveのパーツをブログに組み込んでリアルタイムにやり取りしたり、Bot を Wave へ埋め込んで人間の代わりのような動きをさせたりといったデモがすでに用意されていますが、技術的には感心するものの利用イメージがあまり膨らみません。もう少し複雑さを取り除いていかないと、デモで見せている以上の利用法がなかなか出てこないのではないか。。。「すごさ」は堪能しました。これからは「すばらしさ」を探してみたいと思います。


いま、Wave公開の第一報を耳にしたときの印象 (「Google Wave に人類は対応できるか」) を思い起こしましたが、少しいじってみた上での感想はあまり大きく変わってないなあ、というのが正直なところです。