Be Smart, Clear and then Think Different


シンプルであるがゆえに明快でしかも考えるほどに味が出てくるスローガンやキャッチコピーに時折出会います。


私の生活する IT業界を例にとると、現在 IBM がキャンペーンを展開している「Smarter Planet」の "smarter" という言葉、これはよく考えられたメッセージです。直訳では「賢い」となりますが、さまざまな含みを持った言葉で、たとえば「上手に」や「気の利いた」と読み取ることもできますし、「(贅肉=ムダ)をなくしてスマートに」という不況のさなかどの企業も注力しているポイントを表す言葉にもなります。


SAPも「クリア」という言葉を使い始めました。基幹業務ソフトウェアベンダーとして「見える化」を推進してきた同社ならではの「見通しのよい」というメッセージです。こちらの言葉も、単に見えるという意味にとどまらず、「(汚れのない)きれいな」とか「明快な = はっきりと、わかりやすい」などなど、多面的です。


では、上述のような外資系企業が考えたシンプルな言葉 (英語) を各国で展開するにあたり英語のまま使用すべきでしょうかそれとも翻訳すべきでしょうか。私の意見は、キャッチとしてはそのまま英語を使い、意味 (コンテキスト) はしっかり日本語で伝える*1、です。翻訳したものをキャッチで使うと、オリジナルの言葉が本来持つ多義性にフィルターをかけてしまうことになり、場合によっては意味を狭めてしまいかねないし、ブランディングの観点からもグローバルでの一貫性を損ねてしまうからです。


一方、複数の単語のつながりや、文章の構成をとるスローガンも多く見られます。ただし、よほど簡単な文章でない限り、私を含めて多くの日本人はそれらの意味を直感的には理解できず、結果として作り手の自己満足になりかねません。スローガンやキャッチはシンプルでユニバーサルな言葉がいい。かつてアップルが使っていた「Think Different」は二単語。この程度の長さと言葉はシンプルですね。

*1:たとえば広告であれば本文の日本語を使って