事故を未然に。「インターロック」

IBMでは「インターロック」という言葉を頻繁に使います。「部門間で調整・協調する」といった意味の社内用語で、インターロック・ミーティングてなことを年中やっています。在籍当時は「関係者多すぎ」といささか辟易していましたが、社内構造や部門間の役割分担が複雑化した大企業ではある程度仕方がないことなのだと今は思っています。ただ、大量のミーティングの常態化は避けたい、そのためにはインターロックをなくすのではなくて、それを上手に実現する方法を探ることが必要なのであります。(そのための Lotus Notes なんだけど...)


一方、「インターロック」(あるいは「安全インターロック) は産業用語として安全装置のようなものを指すことがあります。特定の機能について、指定した条件を満たさないと本来の動作をしないようその働きを制御するメカニズムのこと。シュレッダーにおいて実際に紙を挿入するまでは作動しない、なんていうのはまさにインターロック機構。日本人は、この手の仕掛けを機械に仕込むことについて、ときにはおせっかいと思えるほどに、長けていると思っています。たとえば、車が走り出すと自動的に扉にロックがかかる機能は相当以前から多くの乗用車に組み込まれていましたが、メルセデスがこの機構を採用したのは比較的最近*1です。


さいたま地検によれば、練馬の外環道で起きたマイクロバスからのサッカー少年転落事故は、ロックされていない状態の車内の開閉レバーに少年の体が触れた拍子に扉が開いてしまったことがメカの観点からの理由である、とのこと。事故は運転手の過失であるとして起訴されているわけですが、走行時に自動ロックがかかるインターロック機構が備わっていれば防ぐことができたのではないか、という意見も聞かれ、「連携機構」が得意なはずの日本人が作った車にこれが組み込まれていなかったのは残念でなりません。(脚注に書いたように) 緊急時の脱出を考えると自動ロックは必ずしも適切な機構とは言えない、という考え方もありますが、どうなんでしょう、扉がロックされていたために被害が拡大した自動車事故というのものを私は耳にしたことがないのですが。。。 いずれにしても、扉の自動ロックがベストなのかは私には判断付きませんが、事故防止のためのインターロックはきわめて重要なことなので、製造メーカーの対応に注目しましょう。
(念のため書き添えると、このエントリーはあくまで機械の安全機構についてのみ記載しているのであって、上記の事故に人的過失*2があったであろうことはむしろより大きく問題視されるべきものだと思っています)

*1:もっとも、メルセデスが自動ドアロックを採用しなかったのは彼ら流のこだわりが理由であるという説もあります。ドアロックはあくまで盗難防止のためであり、しっかり閉じられた扉が走行中に開いてしまうことは (彼らによれば) ありえず、むしろロックをかけてしまうことによって非常時の脱出に手続きが増えてしまうことを嫌っているようです。一時期私が乗っていた近年の (2000年モデル) メルセデスは自動ロック機能が導入された後のモデルでしたが、彼らのこだわりは残っていて、ロックがかかっていてもドアハンドルを引くだけでドアロックはいっしょに解除されました。つまり、彼らにとってのドアロックは引き続き盗難防止 --この場合、おそらく、乗車時(停車時)の社外からの侵入を防ぐ-- のためであり、走行中の開放防止目的ではないのです。

*2:運転者がロックをしなかった、ということだけではなく、行き帰りの付き添い体制ほか監督・管理方法に問題はなかったのか、という点