Close Encounters of the... ある意味では未知との遭遇


一生のうちでもう二度と経験できないんじゃないか、という場面に遭遇しました。

徹夜明けの私は、「今日は早く帰ろうと思ってたのに結局こんな時間になっちしまったな」と独り言をつぶやきながら会社正面を出て、ほどなく「ていぱーく」側へ横断歩道を渡る。そこから丸の内方面へ90度右へ向きを変え、青信号を待って前進するも、何かいつもと雰囲気が違う。音もなく赤色灯を回すパトカーが交差点を横切って行く。警官らしき制服姿の男性が反対側の歩道にじっと立つ。日時は9月20日、22時ごろ。


三井アーバンネット前の広場を通り越し、野村ビルの横をさらに前へ進むと、その先の交差点で複数の警官が交通整理をしていることに気付く。左右から交差する道で赤信号を待つ車がじっとしているのは当然として、歩みを進める私と並行する道の信号が黄色から赤に変わっても警官は車の誘導を止めない。「はい、行って行って。止まらないで」。そして歩行者は横断を許可されずその場で待たされている。


私が大手町駅前交差点に歩きついたころ、ちょうど車の流れが止む。交差点四隅の歩道には、私も含めて道を渡ることができずに「いったい何が起きるのだろう」とキョロキョロする人々がどうだろう、30人くらい。警官の目は険しく、人々が一歩でも動こうものなら、「動かないで。じっとして」という強い口調で制止される。動きが止まった交差点の中心には、先ほどまで交通整理をしていた警官のみが立っている。「静寂」とは、この状態を最も的確に表す言葉だ。


後ろを振り返って神田方面へ目をやると、静かに、ゆっくりと白バイが移動してきた。続いて、やはり静かに、ダーク系の色の車が数台走ってくる。ここまでくると、いま目の前で起きていることにいくつかの可能性があるということを感じ始める。


ほどなく、この静寂が必要な理由を理解する。目前を流れていく車の中の一台、後部座席にやや身を起こして腰掛けているのは、皇后美智子さまだった。私は車の進行方向左側の歩道に立っていたので、道路交通法に忠実に左側通行をするこれらの車たちは、私の眼前5メートルほどのところを次々と通り過ぎていた。つまり、その程度の距離感で、図らずも私は「接近遭遇」を果たしたわけだ。


心の準備があったわけではないので、ご夫妻での移動だったのかを確認することはできませんでした。すべての車は大手町駅前交差点を皇居方向へ右折していきましたが、車に乗り込みながら警護に当たっている方々の鋭い目と、歩道上で (動くな!と言われて)「だるまさんがころんだ」状態で目を点にしている私たちが妙に好対照でした。


↓現場↓