全国学力調査で試験対策やるなんて


教育委員会が主導で「全国学力調査」の "試験対策" をしていたことが発覚』というニュース。
(http://www.asahi.com/national/update/0517/OSK200705160089.html)


学歴社会ニッポンで生きる大人のセコさが現れた事件ですね。私はもともとこの全国学力調査に反対で、その理由は、(1)『児童・生徒の力を把握し、弱点を見つけて一人ひとりの学力向上につなげる』が調査の目的であるとする文部科学省の言い分が信用できないのと、(2)今回の事件のように "健康診断の直前だけダイエットをする" 的行動をとる大人(児童の親も含めて)が出てくるはずであるとの予測、が主な理由だったのですが、早速 (2) の行動を起こす大人が出た (発覚した) 格好です。


上記報道によれば、北広島教育委員会主導で「想定問題集」を作成しすべての町立小中学校に配布、試験での時間配分や解き方を指導させた上に、その指導結果の報告も求めていたといいます。『2週間程度の対策で平均点が上がるはずがない。上がればうれしいが、問題集は授業の改善を図るためで、通常の教育活動の一環だ。全国の結果に大きな影響が出るとは思わない』とする当該教育長の発言も完全な開き直りで、見苦しく感じます。


文頭で「学歴社会」という言葉を皮肉をこめて使いましたが、より正確には、学歴そのものに問題があると言うよりは、学歴社会を形成する試験制度や高等・大学教育の浅さに問題がある、と私は考えています。端的に言えば、「試験さえ通ればいい」という、試験中心の構造 (教育システムの根源的な問題) を変えていくのが文部科学省の役目であるはずが、そういった本質的な問題を改善する前に表面的なところばかりいじっているから結局何も変わらないどころか、今回問題となっているような大人が永遠にいなくならないという状況を作り出しているんだと思っています。


最近、会社の研修に参加して「ロジカルに考える」てなことにちょっと触れています。元々ロジカルに考えるタイプだと自認していましたが、そんな私でも研修中は様々な発見があります。で、ちょうどこの研修に参加しながら思ったことがあって、それが「学歴社会 (=試験至上主義) でツメコミを是として "勉強" してきた人にとって、ロジカルシンキングは目からウロコだろうな」*1ということです。ツメコミは、物事の本質をロジカルに捉えるという "急がば回れ" 的なことには時間を使わず、ひたすら暗記と反復を繰り返すことに脳の CPU とメモリーを無駄に消費しているように思えてなりません。私が中学受験に反対な理由のひとつもこれです。


以前いた会社の上司で、なかなかうまいことを言う人がいました。

「人間てのは、一生のうちで勉強に打ち込める期間と量にはある程度上限がある。小さいうちにツメコミでこれらを浪費してしまうと、その後進学していく中で一生懸命勉強できなくなる」


いわゆる「能力の限界」みたいなものが人間の脳にある、とは私は思っていなくて、ただ、ここで上司が言いたかったことは「身にならないことに死に物狂いに取り組んで疲弊してしまうと、後々大事なときにそれ以上のがんばりができなくなっちゃうよ」ということなんだと私は理解しています。ツメコミ教育とそれをもたらしている日本の教育システムってのは、どうにかしなくちゃいかんですねえ、と思っております。

*1:もしウロコが落ちなければ、その人はそこまでってことですな