『大企業のウェブはなぜつまらないのか』について


夕食を済ませてオフィスに戻る途中で、IBM時代の上司(女性です)に偶然出くわしました。東京サンケイビルの地下に入っている「ビストロ リヨン」という店で『大企業のウェブはなぜつまらないのか』の出版謝恩会(?)が開催されていたようで、彼女は店先で "受付のお姉さま" 兼 "書籍販売員" をおやりになっていました。ということで、本は無条件購入。(買わされたんじゃないですよ、率先して買ったのです)


で、一章が終わるところまでざーっと斜め読みした範囲ですが、この本への感想は以下の通り。

  • タイトル
    • いかにも今風で目を引きますが、個人的には英語のタイトル ("Web Innovation for Corporate Transformation") のほうがすっきりしていて好感が持てます。もっとも、本の内容がこれに応えるものであればという前提で。(一章までは少なくとも現象の羅列に過ぎませんでしたので)
  • 想定する読者、想定しない読者
    • 「まえがき」にて、この本は明確に大企業のマネージャー向けであると書いています。これはつまり、「ウェブ進化論」を読んで頷いている(頷くことができる)読者は想定していない、というのが私の理解です。ITに多少の見識がある読者も想定外でしょう。そういう視点であれば、「ウェブ..」で頷いたような読者にとって既知で多少退屈な内容になったとしても致し方ないところですが、一方で中途半端に技術的な視点が見え隠れしているようにも思います。企業のネット化への取り組みを「実験物理学的」と表現しているのも、なんだか理系むき出しで、分かるようで実はよくわからない。大学でなんちゃって理論物理学を専攻していた私でさえちょっとよくわからず、果たして想定する読者にこういった表現が適切なのかどうか、疑問です。


この本の書評は「新鮮味なし、つまらない」と「ためになる!」の二極化しているようです。これは、まったく自然なことです。「ためになる!」の声が多いのであれば、上記のような私の疑問はハズレなのかもしれませんが、はじめの50-60ページを見た範囲では現状の整理が中心で、著者のメッセージが聞こえてこず、やや表面的なものに感じられました。その第一章は「現在の地図」と名づけられていることから、ネットを "俯瞰" することが目的だからそうなったのかもしれませんが、"俯瞰" するということは上空から眺めているだけではだめで、高みから見下ろすことによって大きなうねり (←この表現、私はよく使っちゃうのですが) を捉え、その先を見通すことが必要なのだと思います。そこへの強いメッセージが欲しかった。


とは言え、すでに何冊も並んでくる私の読書キューの最後にはこの本を置いておいて、そのときが来たらあらためて最初から目を通してみたいと思っています。