アップルは消費者を、どこまで家電をおさえるか

saitokoichi2007-01-16



iPhoneの発表、Macworld 2007 のスティーブ・ジョブズによるキーノートを先週二日がかり*1で見ました。iPhoneという、ジョブズから見た「3つ目の歴史的製品」の発表会という意味ではたいへんシビれたプレゼンでした。黒字白抜きのスクリーンに「iPhone」の文字が写り、その前にジョブズが立っている姿は、歴史の教科書に残るかもしれません。かっこいい。


iPhoneはめちゃくちゃにキュートです。ユーザーエクスペリエンスという視点では、スーパーなデバイスだし、購入意欲はわきます。社名変更もあわせ技として、アップルはさらに一歩コンシューマー・エレクトロニクスへの進出を前進させたことになるのかもしれません。(えと、唐突ではありますが、このエントリーは「iPhoneとApple TVの発表で明らかになった新生アップルの経営戦略」というエントリーに触発されて書いております)


が、アップルはムテキなのか? 今後のご家庭電化製品事情をちょっと考えてみたいと思います。


1) iTunes はちっとも使いやすくない
どうしてiTunesを超えるメディアセンター的なソフトウェアが出てこないのか、不思議です。iTunesはアップルのデバイスとの相性において最高の価値を出しますが、市場を独占し続けるほど強いとは思えないのです。いわゆる(主に米国を中心とする)メディア産業との関係においてジョブスが極めて強力な交渉能力と人間関係(立場)を持っているということは間違いありませんが、肝心のモノ(iTunes)について圧倒的な強さがあるというふうには思えないのです。従来のものよりはるかにマシであったということは事実ですが、もっとマシなものができてもおかしくありません。別な観点から、「iTunesに縛られている」と消費者が感じることはないか?という点も今後のアップルを占う意味で注目していきたいところです。


2) ホームサーバーは死んだか
個人的には、まだこの幻想(?)を持ち続けています。家電のコントロールセンターとメディアセンターとコミュニケーション(いわゆるすべてのインターネットアクセス)インターフェースが融合された単一のデバイスあるいは集合体。かつて私は家庭内に置かれた「ホームサーバー」をイメージしていましたが、いまはこれが物理的にどこにあるかは重要ではないと考えるようになってきました。コンシューマー・エレクトロニクスをおさえるということは、これらをおさえることではないかと。確かにアップルや任天堂が近いところに立っているのかもしれませんが、まだまだのような気がします。どうしてうちの冷蔵庫*2とテレビはつながらないのか? なぜ我が家のお風呂はエアコンと連動しないのか? それらをつなぐ「何か」を見つけられたひとが、(広義の)デジタル家電を制すのではないかと思います。はち切れる家電メーカーが出てきて欲しいなあ、というのが個人的期待。スタートラインとしてまずは1万円未満のインターネット端末でも作ってみてはどうかしら。


3) ひとはどこでなにを消費するか
家庭の活動は消費活動が中心です。買う、食べる、着る、捨てる、、、。iTunes Store では音楽やテレビ、ラジオ、映画などを購入できるので、音・絵といったものを流通させるには適したインターフェースです。しかし、それ以外の消費物 -- 単に食べ物とか衣類とかだけではなく --、「情報」を流し・消費(?)する場所にはなっていないと考えます。究極なパーソナライズされたポータルってイメージです。過激な言い方をすると、iTunesの守備範囲はmaxまで来たのかなあ、と感じます。もっとも、メディアの流通・消費はこれからも爆発的に増えていくでしょうから、市場はまだまだ激しく成長していくでしょう。今の形態のテレビも形を変えていくでしょう。しかし、人々の生活にはまだまだデジタル化されてないもの、あるいはされていたとしても万人が受益者となっていないものが多く残されているような気がします。


これらが、やっぱり、デジタルな世界にエキサイティングな何かを感じ続けられる理由だと思っています。ゆっくりとゆっくりと動き続ける革命の真っ只中にいるんだなあ、とワクワクするわけです。

*1:なにせ夜遅くまでまじめに仕事しているので(笑)、じっくり見る時間がとれない

*2:かつて「インターネット冷蔵庫」というコンセプトがありましたが...(笑)