SANKEI-EXPRESS試読版再び

saitokoichi2006-12-26



創刊日に配っていた試読版を見た感想を以前ここに書き込んだ「SANKEI-EXPRESS」ですが、本日再び試読版がサンケイビル内で配られていたので手に取り、あらためて「この新聞を購読するモチベーションってなんだろう」と考えてみました。


「真ん中で折れない段組みはよろしくない」とか「上質紙は重量を増すのでかえってマイナス」といった主に技術面の不満点は以前のエントリーで書いたとおりです。仮にこの新聞が、CFでキムタクがやっているように「毎朝の家庭内で読まれる」ことを前提としているならば、"そんなひとはいません" と言いたい。


で、中身の話。直接の関係はありませんが、最近出た「ウェブ人間論*1で活字メディアの行く末についての議論がありました。別に今に始まった話ではありませんが、『やっぱ紙媒体は当分残るよ』(梅田さん)と『予想以上に早く電子媒体への移行が進むのでは』(平野氏)という掛け合いの中*2で、『一番やばいのは雑誌でその次に新聞』という梅田さんのご意見がありましたが、私は雑誌よりも新聞のほうが淘汰されていく側だと思っています。新聞は、もちろん各紙の個性はあるものの基本的にある程度の客観性が求められており、コンテンツとして幅が広がりづらいという面があります。一方雑誌は、私の印象では、新刊も続々出ている*3し、ヒトの多様性をうまくキャッチして万人には読まれないけれどツボにはまったある程度の規模の集団にはしっかり売れる、というところを上手にやっていけば、むしろ新聞よりも寿命は長いのではないでしょうか。情報誌と見られる「ぴあ」*4も、Web検索で得られるような単なるインデックスというよりは、もっと趣味性のところに注意を払っていて、一見なんでもない情報一覧のように見えるのだけれど実はいろんなツボを持ったヒトに訴えられるような「おっ」という情報セレクションとその見せ方の工夫に注力していると感じます。


長くなりましたが、やはりこの手の新聞は辛いと思います。かなり無理のある比較かもしれませんが、街行く人々は「あたらしい新聞」よりもHot Pepperのほうが有益と思うでしょう。もし、SANKEI-EXPRESSをコンテンツ面で改善するのであれば、私なら「インデックスにもっと力を入れ、目を引くトピックを文字通り目を引くような表現で見せる」ことをおすすめします。あと、毎日読まれることにとらわれずに、刊行の間隔を少し取ってみてはどうでしょう。上述の「ぴあ」が優れているもうひとつの点は、「毎日更新される情報にキャッチアップしようとしていないこと」だと思っています。日々変わっていく、流れていく情報は、みな間違いなくWebから入手します。雑誌の優れた点の一つとして見落とされがちなのは、更新の間隔がリアルタイムではないことだと思っています。


余談ですが、写真は水上・宝川温泉の一風景。ここには、個人的にツボにはまってしまう案内板やがらくたが多くあり、これもそのうちのひとつです。温故知新 - 古き(紙媒体)を温めて新しきを知ろう。

*1:タイトル的には「便乗」っぽいですが、まあ「進化論」著者の梅田さんが共著なのでよしとしましょう。この本についての感想文は機会があれば別に記したいと思います

*2:この議論、いまひとつ深みに入っていけないという対談モノの辛さが随所に見られる同書の中でも比較的面白い部分でした。ITコンサルタントを生業とする梅田さんが紙媒体の価値存続を主張しているのに対し、作家である平野氏が逆にデジタル世界の可能性を強く訴えるという、ちょっと面白い構図になっています

*3:先日美容院で知ったのですが、「65歳以上限定」なんていう本もあるのですねー。もっともこれ、表向きはそう言っているけれど、もう少し下の年齢層もターゲットにしているんだと思いますが

*4:余談ですが、私は個人的にぴあ歴が長く、隔週刊・150円の時代から愛読していました