40代でも知っておきたいこと〜What You'll Wish You'd Know

saitokoichi2006-11-25



江島健太郎さんのブログからたどって(実は初めて)知った「知っておきたかったこと - What You'll Wish You'd Know (日本語訳)」とう文章、元々は高校生に向けて書かれたエッセイのようだけれど*1、年をとった人間でも時折読み返してみる価値のある文章だったと思うので、ここに印象的だった部分をいくつか引用して紹介するとともに自分なりの意見を添えておきたいと思います。


まず始めに一言。この手の文章で気をつけなくてはいけないことは、怠惰であることの言い訳として都合よく理解してしまうこと。以前スティーブ・ジョブズによるスタンフォード大学卒業祝賀スピーチが話題になったことがありましが、これを読んだ最初の印象は、ロクな努力もせずに漫然と"好きなことばかりしている"若者の都合のいい言い訳になりはしないか、ということでした。とりわけ、「責任を持つ」ことへの意識が低い日本人は注意が必要だな、と感じました。


さて、ようやく引用と意見。

他の人に出来ることを自分は出来ないと思っちゃだめだ。それに、自分の可能性を過小評価してもいけない。すごいことを成し遂げた人を見て、自分とは人種が違うと思うかもしれない。しかも伝記ではそういう幻想はますます誇張される。

この前後の文章では「あきらめるな」がメッセージとなっています。言葉を変えると「自分の可能性を信じて一生懸命努力しろ」ということ。優れた業績を残したひとを見て「自分とは違う」と思うなということです。筆者は天才の存在を否定はしていないけれど、「才能」「素質」なんて言葉で安易に成功者を分類しようという姿勢は自分の怠惰さを正当化することであり自ら歩みを止めてしまっている。しかし人間は歩き続けていなければなんの成功もない、ということ。左記のジョブズのスピーチで感じたもうひとつのことは「これは彼だから成功したんだよな」っていう思いでしたが、でもこれは正しい読者(聴講者)の姿勢ではなかったな、と今は思っています。

この問題の解法は、反対側からやってみることだ。ゴールを最初に決めてそこから逆算するんじゃなく、より良さそうな状況に向けて少しづつ前に進んでゆくんだ。成功した人の多くは実際にはそうやって成功したんだ。

ゴールなんてそうそう決められるものじゃないし逆に自分を縛ってしまう原因にもなるから、その時々で考えながらよりよさそうな(より選択肢が広そうな)方向へ進み続けるべし、ということ。梅田望夫さんとはてな・近藤さんの対談の最後のほうだったかな、梅田さんが似たようなことをおっしゃっていた。*2 私たちはどうしても「目標はどこだ」「何のためにそれをするのか」と問いがちだけれど、これは時と場合によっては悪となってしまうこともあって、とくに「生き方」みたいなすごーく高い地点から見なくちゃいけないものについては、常にアンテナ張って、ちゃんと見て・考えて、特定の方向を目指すのではなくて"良さそうな"方向を向いていけば自然と道はできてくるのではないか、ということですね。間違えちゃいけないのは、日々の仕事では目標とか目的はとても大事ですよ。(笑)

上記と関連のある記述が後半にも出てきます。

プロジェクトが君の将来目指すものにあまり関係なさそうだったとしても、心配することはない。目指すものに到達する道っていうのは、君が思うよりずっと大きく曲がりくねるものなんだ。プロジェクトをやることで、道は伸びてゆくんだ。一番大事なのは、わくわくして取り組むことだ。そうすれば経験から学ぶことができるからだ。

とくにかく興味の持てることに積極的に取り組んでいこう、ということ。「正しい道」は元々存在するものではないし、わくわくしながら取り組んだものが無駄になるはずがない、というメッセージ。


そして、まとめとして、自分がすべき仕事とは?についてのひとつの視点。

やりがいのあることって何だろう。すごい発想をする人達はどこにいるだろう。そして一番重要なこと:自分は何に興味があるだろう。「適性」という単語はちょっと誤解を招きやすい。元から備わった性質のように思われるからね。最も強い種類の適性とは、ある種の問題に対するどん欲な興味だけれど、そういう興味は後天的に獲得するものが多い。

好奇心に従い、そして努力を怠るな。道は開ける。-- これかな、ボディーは。そして私の唯一のコメントは、「好きなことをやっている」と「好きなことに取り組んでいる」というのは姿勢として正反対なことなので勘違いしないようにしよう、です。


最後に。

私は、小説以外の文章を読むときはたいてい「粗探し」をしようという少々ひねくれた姿勢で臨みます。これは、そのような気持ちになることによって目の前の文章をしっかり理解しようという読み方になるし(少なくとも私はそうです)、なにより大事なのは、盲目的になることを防げるので比較的冷静に・公平な視点から素敵な意見を吸収しそうでない部分は除外することができるという点です。どんな素晴らしい文章でも書いてあることの100%が自分に当てはまるとは限らない*3ので、盲目的にならないことは重要だと思っています。

*1:そしてそもそも江島さんのエントリーは大学生や30歳未満の若者向けに書かれている(笑)

*2:この対談でもうひとつ印象的だった梅田さんの言葉は「正しいときに正しいところにいる」ことの重要性。これについては別な機会に触れてみたいと思います。

*3:100%当てはまる場合もあるかもしれないけれど、そうなのかどうかも含めて自分には判断つくわけではないという前提に立つことが必要