『ウェブ時代をゆく』のすごさを考える


決して盲目的に梅田望夫さんを信奉しているわけではないのですが、この本*1、すべての人にすすめたい。


読んでどう感じるかは様々だと思いますが、この本を批判的にしか受け止められない人がいたとしたら、その人はどうかしていると思う。なぜなら、この本を読んだ私たちがすべきなのは、書かれていることが正しいとか正しくないとかという議論ではなくて、「で、今日からどうする?」を考え、実行することだけだからです。


世界で起きていることを期待と確信を持って「内部から客観的に」語った『ウェブ進化論』とはまったく違う方向性の本で、一見すると「この時代にどう生きるか」をつづった一種のノウハウ本。一般的なノウハウ本と決定的に違うのは、選択しうるオプションを曖昧さなく明快に提示し、判断のための材料を可能な限り提示し、正しい道はひとつであると強制するわけではなく、一貫して「個」の解放のための「考えろ!」を訴えているところであります。 --いや、これはノウハウ本ではない。梅田望夫さんそのものだ。


新書で提供してくれることの価値
考えを伝えるのに立派な装丁など不要、書籍の体をなしていれば十分だということ。消費税 5% をつけたって、777円。買わない理由が見当たらない。


カッコ(「」)の多用
その意図について筆者自身が本書で語っているわけではありませんが、本文中ではカッコ(「」)がものすごい回数で登場します。いや、回数などとは呼べないくらいの量で、もはや文章の一部と化しています。これだけ文章力がある方がカッコを多用したことには絶対に特別な意味というか何らかの強い意志があるはず。単なるテクニックと言えばそれまでですが、曖昧な表現を排除するためにカッコでくくれるコトバを定義し、全体の流れ(文章)の中に組み込んでいくという作業を通じて、伝えたいことを一字一句すべて受け取ってもらうために必死に筆を進めている状況が目に浮かびます。


すべてをさらけ出していること
同書から受けた感動にモロに直結しているのが、この点だと自分では思っています。読めばわかりますが、読者へ正面を向いて語りかけている状況を作るために、梅田さんは「すべてを」さらけ出しています。
自分にとって「好きなこと」「向いたこと」を探してそれに突き進め、というのはこの手の本でお決まりのフレーズですが、じゃあそれをどうやって探せばいいのか、についてここまで踏み込んだ本を私は読んだことがありません。どうして深く踏み込むことができたのかと言えば、「体験談」などと言っては生ぬるい、文字通りの赤裸々な過去の記憶が語られているからだと思っています。自分なりに「好きなこと」を探し続け、様々な選択をしたその過程で考え苦しんできたことを、おそらく、すべて包み隠さず梅田さんは吐き出している、そう私は感じました。


ウェブ時代をゆく』は、『ウェブ進化論』で見せた「心を揺さぶる」文章力は健在で、まさに「渾身の」という言葉が 100% 当てはまる書です。『ウェブ進化論』で心に灯がともり、本書でなにか心のスイッチが入ったように感じる、そういう多少かぶれた(笑)読み方ができれば、明日を興奮する力*2が誰でも持てるようになると思います。


ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

*1:ウェブ進化論』がよかったので

*2:私のプロフィールにあるフレーズ