わかれ話

2003年の秋に出会い、12年と数か月を共に過ごした伴侶とお別れをしました。ここで言う伴侶とはクルマのことですが。


スーパーカーブーム」世代ど真ん中ということもあり子供のころのぼくはクルマと言えばイタリアのスポーツカーもしくはポルシェという画一的な憧れを持って育ちました。年を重ね『NAVI』という『CAR GRAPHIC』の兄弟雑誌を購読するようになりエンスー気取りをかましていたころ、クラシックで不格好な中にも強い個性が光るSAABに心を惹かれました。


そして2003年、当時のSAABでは一番大きなモデルだった「9-5 3.0t」のステーションワゴンを購入することができました。本当はコンパクトな2.3リットルエンジンかつセダンタイプが良かったのですが、国内在庫が限定的で選択肢が少なく、思い通りにはいきませんでした。(その年のSAAB全モデルの国内新車販売台数はわずか782台)


さほど速そうには見えないルックスに反してV6 3リットルターボは十分以上の図太いトルクと爆走をもたらしてくれましたが、燃費面ではお財布に厳しいクルマでありました。一方、ステーションワゴンという型については結果オーライでしたね。購入時は子供たちが幼稚園〜小学校低学年で、たくさん荷物を載せて家族で移動することが増える時期でもあり、たいへん便利でした。


とは言え故障は多かったです。夏場に送風口より温風が噴き出すこのクルマ特有の病気は購入直後からしばらく治らなかったし、各種液漏れ系は日常茶飯事でした。しかし一番困ったのは購入6年目のターボユニットの不調。心臓部のタービンだけで部品代が40万円に上り、総額100万円近くかかった大手術のときは買い替えるべきかかなり迷いましたね。その後、メーカーとしてのサーブ・オートモービルの度重なる身売り話に気をもむ日々が続き、破産宣言後は故障がちなクルマがゆえに部品供給の不安を常に抱えていました。


センターコンソールにイグニションキーを差し込む独自のデザインとこだわり、硬めのグミのような絶妙な噛み応えを妄想するシート、ドライバーを囲むように曲面するウッドパネルと古臭いオーディオやエアコンのスイッチの数々、夜間走行中にスピードメーター以外を消灯するナイトパネル、信じられないほど安っぽい操作音を出すウィンカーやワイパーなどのスイッチ類、すべてに愛着があります。もちろん、直線と曲線、平面と曲面が完璧に調和する飛び抜けてスタイリッシュなエクステリアは言うに及ばす。。。


もう出会うことはないと思うけど、これまでありがとう!