吉野家のチャレンジ


牛丼業界が価格競争やらサービス差別化やらで賑わうようになったのはいったいいつごろからだったのでしょうか。ぼくが若かりしころは牛丼を主力メニューとする全国規模の大手チェーンは吉野家くらいしかなくて、並で400円(たしかそのくらい)のちょっとだけ高級なファーストフードだったわけです。「ここは吉野家♪、味の吉野家♫、牛丼一筋。。80年〜」と "こぶし" のきいた聞いたCMソングが流れていたころ、そもそも牛肉の "ぜいたくさ" が今とはちょっと違う、そんな時代です。

すき家、脱・牛丼へ戦略的な値上げ
ゼンショーの課題は人手不足だけにあらず
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150407/279697/


それが、仕入れ方法とか為替とかいろいろ工夫や外的要因はあったにせよいつの間にか200円台で牛丼が食べられる時代になって、で、気づけば牛丼屋さんが「脱・牛丼」などと叫ぶ今日このごろ、牛丼(並)一杯が300円台に入ったとか入ってないとか報道されておりますが、過去の吉野家のチャレンジを思い出すといちいちそんなことで騒いでんじゃねえぞと一喝したくなるのであります。


私の記憶にある吉野家のチャレンジはふたつ。「高級吉野家」と「吉野家USA」。


高級吉野家
赤坂見附にあったんですねえ、そういう店が。正確にこの店名だったかどうかは不明。

暖簾は藍色、店員さんは着物を着ていました。暖簾をくぐって店内に入るといきなりガラスのショウケースにおいしそうなお肉がディスプレイされ、「こちらのお肉を使用しております」の但し書きが添えられていました。牛丼のお値段は700円前後くらい(記憶に自信なし)だったと思います。大盛りもありました。味はたしかにおいしかったです。普通の吉野家の牛丼もとってもおいしいと思っていましたが、高級吉野家の牛丼は肉のうまみと風味がグレードアップされている印象でした。

ポイントは、「プレミアムメニュー」を追加したわけではないというところ。「高級店」そのものを作っちゃったんです。

一、二度お邪魔しただけでしたが、店構えからして「高級」だった吉野家は忘れられません。


吉野家USA
はじめて見た時は目を疑いましたねえ。

地元のJR北浦和駅西口には以前から吉野家があったのですが、そこがある日突然「吉野家USA」という看板に置き換わっていたのです。オレンジを基調とする吉野家カラーではなく、たしか白がベースの看板じゃなかったかなあ。

興味本位で店に入ると、ハンバーガー店よろしく店員が奥のレジカウンターで待ち構えておりました。メニューを見るとそこに「牛丼」はなく、客が赤面してしまいそうな「ビーフボウル」というお品書きが。こいつを注文するのは抵抗あったぞ。思わず「び、びーふぼうる」という具合にどもってしまった記憶があります。あとは、注文を受けて奥から出てきた「ビーフボウル」をトレーに乗せて自分で席に運んで食べるというスタイル。味は普通の吉野家と変わりませんでした。

こちらも実店舗として「USA」を出しちゃったということろがすごい。高級吉野家と同様、実験的な試みだったんだと思いますが、見かけ上は「期間限定」ではありませんでした。

残念ながら北浦和吉野家USAはその後通常店舗に戻り、現在ではモスバーガーに乗っ取られてしまいましたが…。


クオリティーの高さと牛丼単品にとどまらないヒットメニューの企画力が自慢の吉野家さん。次のチャレンジはなんでしょうかね。期待しています。