ていうか、そんなに勝ちたいのか?


ある晩のこと。赤羽駅埼京線から京浜東北線に乗り換えるために電車を降りました。正確な時間は覚えていませんが、23時くらい、まあ車内も駅も酔っ払いが多い時間帯。かくいうぼくも飲んだ後の帰宅中でした。


いつものように赤羽駅埼京線ホームは混雑しています。電車を降りて2〜3歩進んだとき、目の前を強引に右から左へ横切る男性がいました。しらふの時ならイラッとしつつもそのままやり過ごすのですが、少々酔っていたぼくは「簡単に横切らせてはいけない」と思っちゃったのかな、やや大股に前進したところぼくのつま先と男性のかかとが軽く接触してしまいました。


こっちも大人げないけど向こうも強引な横切りだったので、どっちもどっちだろうとその場を去ろうとしたところ、男性に後ろから肩をつかまれました。


男性:「ちょっと、いま足踏んだでしょ」
私:「ああ、でも、そちらが強引に前をカットしたからじゃないですか?」
男性:「謝れ」
私:「謝れって、そんな一方的な言い方ないんじゃない?」
男性:「まずは、謝ってからでしょう」


相手が「まずは」と言ったことをはっきりと覚えているのですが、この言葉があったせいで、ここはとりあえずお互いの過失を一旦は認め合った上で、以後気を付けような、みたいなその後の会話を想像しながら、


私:「はあ、不注意でしたすみません」


と言ったところ、男性は何も言わずにそのまま立ち去ってしまいました。


なんだそれ、って。ぼくに謝らせればそれでおしまいかい。この男性ははじめから勝ち負けをはっきりさせることしか頭になかったのでしょうか。勝ちか負けかって、そんなに大事なことなのかなあ。その勝ちって、何に対する勝ちなんだろう?何だかすごーく、小さいなあ…


などと考えてたら、少し淋しい気持ちになると同時に酔いが冷めてしまいました。