『小さなお店のツイッター繁盛論』は、ただものではない


ツイッター界隈では飲食店「豚組」のオーナーとして有名な中村仁さんの著書『小さいなお店のツイッター繁盛論』、かなり内容濃いです。タイトルから「はやりの "ツイッター" を活用した、商売のノウハウ本かな?」と思った人は大間違い。もちろん、商売にツイッターをどう役立てるかに関する中村さんの経験と知恵が詰まった本ではあるのですが、「どう儲けるか」については一切書かれていません。誤解を恐れずにすっごく乱暴に書くと、「ツイッターを使って人と人のつながりを大切に深めていけば自然と商売繁盛するよ」という、"間接的な" 商売繁盛ノウハウ本なのです。


いわゆるツイッター本は、ふたつに大別できます。ひとつは「ツイッターの使い方」的な、初心者をメインターゲットにしたもの。そしてもうひとつは「ツイッターの活用術」的な、ビジネスにどう役立てるかという視点で書かれたものです。本書は明確に後者で、ツイッターの基本操作などにはあまり触れず、かなり実践的、実用的です。かといって、ツイッターの知識ゼロだと絶対読めないかというとそうでもなく、読み進めていくことによって逆にツイッターが何であるかがイメージできるようになってきます。


本書の内容は、

  • 飲食店と客の関係づくりにツイッターというツールが非常に有効であること
  • ツイッターを「集客の道具」とだけ見てしまうとその効果は長続きしないこと
  • 「表玄関(公式)アカウント」と「勝手口アカウント」の使い分け (特に「勝手口」の有効性について)
  • ツイッターを通じたコミュニケーションで心がけるべきこと

などについて、実践者ならではの説得力ある語り口と豊富な実例で具体的に説いています。一見すると飲食店向けの内容と思いがちですが、いわゆる一般企業に勤めるひと、とりわけマーケティング関連部門にいるひとも必読だと思います。当の著者の中村さんは、かつては外資系の広告代理店に勤めた経験をお持ち*1で、マーケティングのプロでもあります。


最後に、タイトルにある「小さなお店」について。時代はネットによって「マス」から「ソーシャル」な方向へゆすり動かされています。大きなものと小さなものが、時には対等に、場合によっては力関係が逆転しうるのがソーシャル時代の特徴です。同書のタイトルを「ツイッター繁盛論」とシンプルにすることもできたかもしれませんが、あえて「小さなお店の」と付け加えたのは、著者中村さんの信念、思いが強く反映されたものなのではないかと思います。

追記: 著者の中村仁さんにこのブログエントリーをご紹介いただきました
"斎藤広一さんからも、ありがたい書評を頂きました。「小さなお店」という言葉に込めた思いなどをしっかり読み取って頂いていて感謝です。"

小さなお店のツイッター繁盛論 お客様との絆を生む140文字の力

小さなお店のツイッター繁盛論 お客様との絆を生む140文字の力

*1:ぼくは1995年からロータス株式会社でプロダクトマーケティングに従事していたのですが、当時ロータスを担当されていたのがなんと中村さんです。実際に私が仕事で中村さんとやりとりすることはありませんでしたが。。