できる人もできない人も目を通そう (『仕事するのにオフィスはいらない』より)


社会人になって20年弱、かつての同僚や後輩が起業したという話が増えてきたり、仕事がらフリーランスの方々と接触することもままあったりして、さらには自分のいる業界がITなこともあわせて、『仕事するのにオフィスはいらない』に書かれているような雇用形態や仕事環境の変化について、世の中一般からいえば比較的その潮流を感じることができる場所にいるんだと自分では思っています。


この本に書かれている「ノマド」は大別すると以下のふたつ。


A) 必ずしもオフィスへ行かないワークスタイルとしてのノマド
B) 雇用関係におけるフリーランスというノマド


まるで遊牧民のように仕事をこなす場所を固定化せず、ひいては特定の企業に所属せず自身のスキルや価値をダイレクトに売り歩く生き方。たしかにありですね。でもぼくの狭い視野から見ると、Aは雇用する側の改革が必要、そしてBが可能な職種は(制度とかインフラなどまで考えると)まだまだ限定的ですね。


Aは、同書で詳しく書かれているようにネット上のツールやモバイル環境の成熟によって技術的には問題なく、また在宅勤務を取り入れる大企業が増えてきているという傾向から、今の延長でそう遠くない未来に近い形が実現しそう。一方Bは相応の時間がかかりそうです。というか、そのワークスタイルが適する業界でのみどんどん進化していくもののように思います。ただ、どちらも非常に興味深い切り口であり、読み進めながら様々な光景が頭に浮かんでくるリアルな本で、ワークライフバランスに関心がある方にはおすすめです。


著者の佐々木俊尚さんがこの本で語っていることの大半はAについてで、Bの要素は不規則に出入りしつつも踏み込みは浅めです。次回は、Bに興味を持つ若い読者向けに、たとえばネット時代のフリーランスの「ロードマップ」についてリアルな話を書かれてはいかがでしょうか。ここで言うロードマップというのは、どうやって仕事を次々つかんでいくのか(同書でも少し言及していますが)とか、長期的にどうやって収入を増やしていくのかとか、そういった中長期的な「世界の歩き方」のことです。


仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)

仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)