胃もたれ無縁、「とんかつ双葉」(上野)


上野の名店「とんかつ双葉」はランチタイムのみの営業。メニューはとんかつ (ロース) の単品または定食のみ。お邪魔するのははじめてでしたが、店に入るなり正面の席できちんとした身なりの外国人が食事をされており、由緒ある店であることを印象づけさせられました。


上野広小路交差点から少し裏道に入ったところに構える店は、控えめな暖簾と、そして有名な「騒がしい方はご遠慮ください」の張り紙が引戸に貼られた、どこか昭和なたたずまい。店内も質素なつくりで清潔感があり、店員の応対も丁寧です。


さて、お食事。


主役のとんかつは、脂身の大部分を取り去ったとても厚みのあるロースを、薄目の衣できつね色に揚げてあります。このきつね色は見事。肉は、私がこれまで食べたとんかつの中でおそらくもっとも厚いであろうと思われるものでしたが、スポンジのようにソフトで、非常にさっぱりしていました。そう、スポンジ。「やわらかい」というのとも微妙に異なる食感です。この感覚がどこか来るのかうまく説明できないのですが、ひとつ言えることは、さっぱりさの代償かもしれませんが、肉汁たっぷりというわけではないユニークな肉質の素材を使っているからなのかな、と想像しています。自分の好みとしては、もう少し旨みがほしいところ。衣には、おそらく塩か何かだと思うのですが調味料がごくごく微量まぶされているようで、ソース*1をつけなくてもいただけます。なお私は使いませんでしたがテーブルにはケチャップが置かれており、一瞬洋食屋の風を感じました。


ごはんは、おいしい。味噌汁の具は豆腐、味付けはしっかりしていましたが、まあ並。漬け物は若干塩が強かったような印象を持ちました。


全体的に、とんかつを胃もたれなくさっぱりいただけるような配慮を感じるやさしい味である一方、どこにも強い主張がないという点も否めず、おいしいのだけれど、約三千円という値段はもう一声安くならないかなぁ、というのが率直な感想です。あの厚さの肉を絶妙な揚げ加減と美しい衣で仕上げる匠の技はすばらしいのですが。



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*1:注文すると箸と一緒に小皿が出てきます。「これ、何に使うのですか」と店員へ聞いたところ、とんかつに直接ソースをかけたくない方はここへソースをいれて、かつを浸していただいてくためのものである、という説明がありました。なお、箸は繰り返し使えるタイプのもの。