「模範解答」と「絶対回答」


試験での解答の仕方には「決まりごと」があって、ちょっとでも違う表現を使うととたんにバッテンを食らってしまう驚きについて以前書きましたが、先日、娘が使っているとある定期試験対策問題集を見ていてあきれたことがあったので、この場で笑うことにします。


それは、理科の記述式問題の模範解答で出てきた「但し書き」でした。


解答例の横に「こういう答え方もある」として微妙に異なる言葉が添えられている箇所が結構あるのですが、これは『どの書き方でも正解だよ』なのではなく、『正解となる書き方は先生ごとに異なるので、どの表現が(その先生にとっての)正解なのかをあらかじめ先生に確認しておきましょう』っていう問題集側の「心遣い」なのです。(実際に模範解答欄にそういう「インストラクション」が書かれてます。この問題集はある意味エラい)


これって、絶望的に意味がない。例を挙げればすぐわかる。

  • 例1:「比例」 (「正比例」が正解の場合もあります)
    • → これは、まあ、許そうか。反比例っていう言葉もあるし。
  • 例2: 「コイルの中の磁界」 (「コイルの内側の磁界」が正解の場合もあります)
    • → 中だろうと内側だろうと、どっちでも意味が通じればいいんじゃないかと思うんだけど、不正解にする先生がいるんだね。
  • 例3: 「黒色」 (「黒っぽい色」が正解の場合もあります)
    • → 酸化銀だか何かの色を答えさせる問題なんだけど、物質の見た目の色を表現するにあたって「黒」と「黒っぽい」にどれだけの差があるって言うんだい?
  • 例4: 「炎をあげて燃える」 (「激しく燃える」が正解の場合もあります)
    • →ばかばかしくて理解不能。(だいたい、何が「炎」じゃなくて、どうなったら「炎」なの?)
  • 例5: 「反対」 (「逆」が正解の場合もあります)
    • →同上


模範解答が通らない絶対回答の世界。こんな無意味で画一的な「教育」をしているから、本質は何なのかを考える人間が育っていかないのだよ。考える力を台無しにするような教育って、一体何? (ま、今に始まったことではないが)


試験というものは学力を測るひとつの物差しにはなりえるけど、こういう「意味正解、解答不正解」な慣習があるなら、全国統一テストだなんだと世の中をあおっても、「試験力」の向上は期待できても「学力」「思考力」は今後も減退し続けるね。