在宅勤務を阻害する要因はほとんどない


今朝の日経本紙一面トップにあった『松下、3万人に在宅勤務』という記事について。
(関連記事 http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070328AT1D2705Z27032007.html)


一面トップにするほどの記事なのか?と一瞬思いましたが、松下電器がやるというところにその価値があるのでしょう。さらに、3万人が対象という "国内最大規模" でもありますし。


記事でも紹介されていましたが、私が以前勤めていた IBM では「eワーク」なる制度があって、ごく当たり前に利用されています。ちょっと話がしたいと思って同僚に電話をすると「今日は eワークなので会社に来てません」という回答が返ってくることもしばしば。各社員の業務においてパソコンやネットワークが当たり前となった時代、このような勤務形態を取り入れることに技術的な障害はまったくないと言っていいでしょう。障壁となりえるのは仕事のやり方が変化することに組織や人間関係が対応できるかどうかという点になりますが、大部分は IT をきちんと活用することによって解決できますし、あとは会社としての思い切りの問題かと思います。


IBM での経験からはっきり言えることは、こういった制度下ではコミュニケーションとコラボレーションの IT インフラの重要性はさらに高まる、ということです。これは、電子メールとテレビ会議があれば解決するというものではありません。電子メールはあくまで一過性の情報を伝えるためのツールに過ぎませんし、テレビ会議は「あればなお良い」という程度の補完的なものであり、なくてもまったく困りません。

一例を挙げます。会社に来ないということは業務内容や成果の報告をきちんと管理できるインフラが必要ですが、メールベースで個人対個人の "連絡" ができただけでは管理されている状態とはいえません。ここで管理対象となる情報は勤務時間といった数値的なものもありますが、大半は「何をしたのか」といった情報です。これをワープロ表計算でやる方法もあるかもしれませんが、メールに添付して送ったり (個人の情報 (メールボックス) としてしか残らない) ファイルサーバーに置いたり (検索性著しく悪し) したのでは不十分で、やはり「きちんと文書データ (死語?!) を保管できる」インフラが求められるわけです。たとえば、Lotus Notes/Domino のような。(IBM は当然使っています) あるいは社内ブログを使っているような企業であれば、それを転用するという手もありますね。(大企業では少ないかな)


先ほど「テレビ会議は補完的」と書きましたが、意外に便利なのがメッセンジャー系のソフトウェア。マイクロソフトでいえば「Windows Messenger」、ロータスでいえば「Lotus Sametime」、などなど。これらのツールが備えている在席確認機能を使うと、「いま仕事をしているか」が一目瞭然なので、地理的に離れているところにいてもちゃんと仕事をしているかどうかを把握できます。ログオンをして利用するタイプのウェブサイトでも、いま誰がログオン中かを知る機能を備えたサイトが多くありますが、あれです。別な効能としては、在宅勤務中の同僚とちょっとだけ話がしたいときに「自宅への電話は遠慮しちゃうな」と感じた場合でもメッセンジャーであれば気楽に話しかけられる、というものもあります。


私は家庭と仕事の区別をはっきりさせる性質なので、「自宅でお仕事」は上手にできそうもありません。(笑)
他方、子育てをしながら仕事をしている方々にはとてもありがたい制度であるので、日本の大企業も積極的に採用してくれればいいなと思っています。