「ロータス ノーツ ドミノ サーバー構築ガイド」の裏話

saitokoichi2007-07-27



昨晩は、ロータス時代に出版関係で大変お世話になったゼータ (http://www.zeata.co.jp/) の河合さんと丸の内で3年ぶりの再開。私は "ものもらい" のせいで禁酒状態でしたが、大変楽しい時間を過ごさせていただきました。


河合さんが当時勤務されていたリックテレコムという出版社からは数多くのロータス ノーツ関連書籍を出していただいたのですが、中でも印象に残っているのがノーツ R4.5 のときに出版された、 「ロータス ノーツ ドミノ サーバー構築ガイド」。タイトルどおりノーツのサーバー*1を構築するためのガイド本です。どうして強く印象に残っているのかと言うと、

  • 「ノーツ サーバーの構築は初心者には難しい」*2という声が多かった
  • 利用者の裾野を広げようと思っていたロータスとしては、なんとかお客様を支援したかった
  • 「解説本を製品にくっつけて出しちゃえばいいじゃん」という案*3が飛び出した

この「解説本をくっつける」を実現したプロジェクトだったからです。1997年のことです。


「ノーツを買った人に解説本を差し上げる」という考え方を実現するのは、実はそう簡単ではありませんでした。「製品にクーポンをつけて本屋で交換」*4とか、「ユーザー登録した宛先に書籍を送付」とか、いろいろ考えたのですがすべて没になって、最後に残ったのが『書籍流通版と製品同梱版の2つのバージョンを作って、後者を製造段階で「基本導入パック」のパッケージ (箱) に文字通りくっつけてシュリンクラップしてしまう』でした。本自体はロータス製品ではないので、オマケとして箱の外側にくっつけて出荷したのです。ロータスのソフトウェアはシンガポールでパッケージングしていましたから、現地の工場へ製品同梱版を空輸して、ラップする、という手順ですね。


この作戦、お客様からは大変喜ばれましたが、わざわざ2バージョンを作って片方を製品同梱、片方を書籍として流通させることのロータス/リックテレコム側のメリットは、「基本導入パックを購入されたお客様が1冊では足りなくて追加版を書店で購入していただける(かも)」、「書店での露出が増え製品購入動機のひとつとなる(かも)」というものがありました。


製品同梱版で施した小ワザは、

  • 同梱版からは ISBN や奥付を省略し「非書籍化」 (製品のオマケ化) した
  • シンガポール工場でハンドルさせるためにロータスの管理番号 (パーツ番号) を背表紙 (表4) へ付け加えた
  • 「基本導入パック」の裏面のデザインをそのまま背表紙へプリントした

3点目のアイデアが斬新だったかな、と思っています。上述のように製品の箱に外付けしてラップしちゃうので、そのままくっつけると製品パッケージの裏面がそっくり隠れてしまうわけです。基本導入パックは秋葉原などでも店頭流通させていましたから、製品のウリを語った裏面が隠れちゃうのはよろしくないわけです。だったら、本の背表紙を製品パッケージと同じにしちゃえばいいんでないの、ということで実現させたアイデアです。上に添付した写真は、製品同梱版を開いて背中側から撮ったものです。左半分がまさにこの「パッケージ裏面デザイン」です。


などという話で盛り上がった河合さんは、現在ゼータでユニークなビジネスモデルを展開されています。情報サービスにおいて「書籍」「モバイル」といった "提供形態" ありきでコンテンツを企画するのではなく、ユーザーが必要としている上質なコンテンツを作り出すところを軸に、各種デバイスへの提供/流通方法は外部のパートナーと柔軟に組み立てていこう、というモデルです。最近は「資格王受験王」などの携帯系の商売が好調のようですが、今後はさらに多方面への展開も期待できますね。(どっこいしょっ、と)

*1:当時は全世界的に「ノーツ サーバー」→「ドミノ」へのブランド移行期でして、海外と比べてノーツの認知度が上り調子だった日本ではいきなり「ドミノ」を名乗らずに「ノーツ ドミノ」という中間態を設けたのです。まさに蛹状態

*2:昨今の複雑なソフトウェアと比べたら、えらい簡単な部類なんですけどね...

*3:マニュアルがわかりづらいことを自認するようで格好悪かったけどね

*4:いまならコンビニで交換、も可能か??