「Web2.0とは...」、なんて言わないで

saitokoichi2007-02-16



数ヶ月前に買ったものの半分ほど読んでその後ページを開くことのなかった『マーケティング2.0』(翔泳社)を、出張を機に後半を読んでみました。小説などの場合、始めの1〜2割がつまらない内容の場合よほどのことがないかぎりその後の展開には期待できないということを経験的として持っているため、この手の本でもついついページを送る手が重くなってしまいます。


思い切り "言った者勝ち" なタイトルで書店で手に取るのは正直恥ずかしかったのですが(笑)、共著している方々の名前を見て単なる便乗物というわけでもないだろうという期待があって購入に踏み切りました。


ざーっと巻頭から一読していくと、内容にまったくまとまりがないことにすぐ気付きます。この程度のボリュームの本に対して著者13人ということからも想像できますが、一言で表現するならば「月刊誌の(毎回著者が入れ替わる)1コーナーを、13か月分抜き出してひとつの本にまとめました」という感じなのです。同じ事項に対して複数回の解説が別々な著者によって展開され、通しで読んでいると少々食傷気味になってきます。もちろん、どの章も "Web 2.0 時代の新しいマーケティングとは?" という共通の軸をめぐって書かれており大筋にずれはないですが。ただ、この本はそういうふうに読まれることを想定していないのだな、ということに後から気付きます。監修者はきっと、2006年*1のその時点で起きている変化を瞬間的に書籍という形で切り取っておきたかったのかな、マーケティングというテーマからは当然複数の視点があるから内容の重複よりも多面的なインパクトがある何かが動いているということそのものを捕らえた本にしたかったのかな、と勝手に想像しています。


「動き」とか「変化」を象徴するものとして使われている Web 2.0 という言葉に対して、「"Web 2.0 とは?" という問いかけ」や定義に関する議論を展開することに私は意味を見出せないのですが、同書は左記にかんして多くのページを割いていません。そういう点からも、上述のように時代を捉える試みの本であるのだという思いを持っています。要は、ユーザー主導な市場変化が起きていて、マーケティングの手法やサイクル、メディアのあり方まで含めて変わっていかないといけない時代だねぇ、というようなことがずっと書かれている、そういう本です。

仕方のないことなのですが、非常に限られたページ数の中で多角的な執筆が展開されているため内容が表面的なところでとどまってしまっています。それを承知の上で「流れを捉える」ことを優先したのならば、なおさら、あと一歩でよいので内容のまとまりに注意を払って欲しかったなあ、というのが全体の感想です。というわけで、オススメ本というわけにはいきません*2が、ちょっと気になるなという方は読んでもよいのではないでしょうか。

マーケティング2.0

マーケティング2.0

*1:Web 2.0」自身の "登場" (?) は2005年ですが

*2:1,800円の価値があるかというとちょっとそこまでは、、、というところです