ノーツの効能(4) - 分岐点としてのRaven、オープン化のためのQuickPlace


以前、ノーツは必要な情報を効果的に共有する環境を提供している、と書きました。これは、単純に「情報」を上手に蓄積&取り出し可能な環境を整えるという意味と、すぐれたコラボレーションの場を提供するという両方の意味を含んでいます。ここでは電子メールなどのメッセージングは伝達手段としての超インフラに過ぎず、情報を共有するためのつなぎの役割を担うだけです。


最近やや見方を変えなければと思った出来事はGmailの登場です。GoogleGmailで提案する「メールは消さずにナレッジにしよう」という発想、これはある意味正しい。Gmailを情報共有インフラとして組織内で完全に公開できれば、たいへんなナレッジベースになります。だけれど、本当に個人的なメッセージをどう扱うのか、注意が必要です。メールの特性として、そのメールの送り先(その情報は作り手が誰に宛てたものなのか)であるとか機密度は送り手が指定しますから、公開を前提とすると必然的に機密度を上げる(公開不可とする)傾向が強まり、結果「情報を持っている(抱えている)人=できる人」的な前世代的価値観から抜け出せないことになります。「これはインフラの問題ではなく個々人の意識の問題だ」と片付けることは容易ですが、そのように使用者のせいにしておしまいではなく、運用側での仕組みづくりが組織の競争力に直結する、そういう時代なんだと思います。


話をノーツ(といいますかロータス)に戻します。いま考えると"Raven"*1あたりが分岐点だったのかもしれません。いやもっと前だ、という意見もあるかもしれませんが、昨今のブログやWikiに代表されるコラボレーション環境、あるいは「無限ともいえる情報と、そこから使い手にとって意味のある情報を引き出す技術」の進化を見るにつけ、Lotus Developmentは「オープン」という言葉の持つ意味をまだ十分に理解できていなかったのだと思います。(ま、いまだから言えることですが)


ノーツはコンセプト的にはWiki的だし、ドミノ*2の機能拡張を自社開発にこだわらずインフラとしてよりオープンにすればRSSやタグの活用やフォークソノミーのようなアイデアがドミノ上に展開できていたかもしれません。もっともそのためには、よりシンプルなインフラである必要があり、たとえばQuickPlaceをうまく使えばノーツの真のオープン化が推進できたのかもしれません。

*1:コードネーム(当時)。ナレッジ・マネジメントのプラットフォームとしてLotus Developmentが開発し、後に「K-Station」「Discovery Server」として製品化。ここでは後者について言及していると理解してください。

*2:ノーツとWebをつなぐアドオンから発展し、ノーツ サーバーと統合された