コラボレーションはサチってないのかな


企業向けコラボレーション市場が再び活性化してくる予感、みたいなことを少し前に書きましたが、各社のアプローチが徐々に見えてきて個人的には楽しいです。ほぼ共通するのは、コラボレーション単体の価値訴求ではなく業務系との統合をより強く意識しているように見えるところですが、各社の強みがどこにあるかによってそれぞれ特色があります。


上(経営)からのパターン (SAP "12sprints"*1 )
企業ユーザーをがっちり押さえているSAPのようなベンダーのアプローチ。業務システムの統合を実現している企業へ単に「新しいコラボレーションツールいりませんか」と押し売りするのではなく、「コラボレーション型意思決定ツールです」という具合にあくまで意思決定のところに重点を置く「経営型」の提案。ビジネスインテリジェンス(BI)との統合も今後のトレンド。


下(現場)からのパターン (IBM LotusLive/"Project Vulcan"*2Salesforce.com Chatter)
Twitterライクな情報の流れを作ってそこにデータやツールを統合して行こうという、現場系から基幹システムへ歩み寄っていくというアプローチ。IBMのLotusLiveも徐々に拡張されてこのパターンへはめていくでしょうね。Lotus (IBM)にしてもSalesforce.comにしても、経営側と言うよりはエンドユーザー側主導で広がっていく「現場型」の提案。


異次元からワープのパターン (Google Wave)
Google Waveについていえるのは、それ自身で道具として完結するというよりはプロトコルあるいはプラットフォームに近いところに立っているという点。SAPの12sprintsはGoogle Waveの競合か?などと報じられていたりしますが、SAPはあくまで補完的な関係であると考えている*3ようですし、Googleの企業向け戦略もこの点についてはいまひとつわからないところが多いので、もし来るとしたらそれは予想もしない「異次元からのワープ型」提案となるでしょう。


おもしろいことにというか当然ながらと表現すべきか、上記はすべてクラウドで提供されるものばかりなんですよね。各社が基幹系との統合色を出してきているのは、企業におけるコラボレーション製品市場が飽和し、価値訴求や差別化が難しくなってきていることも背景にあると思います。どのベンターもコラボレーション単体で今後も収益を上げ続けようとしているのではなく、クラウドを土台とした顧客囲い込みを画策しているといえるでしょう。

2010年1月22日追記: IBMのProject Vulcanは、厳密にはクラウド限定ではなさそうで、オンプレミスとクラウドのハイブリッドというか、それらを結びつけることも視野に入れているようです。

2010年4月28日追記: この記事を書いたときには存在していなかった「Google Buzz」。Google Waveがちょっとアレなことになってきているので、この記事で取り上げるにふさわしいのはむしろ「Buzz」の方ですね。こちらはChatterと近いレイヤーにいます。要素としてはChatterのサブセット的ですが、社内用途としてはパワフルでしょう。(Google Buzzについての第一印象はこちら)

*1:ベータ公開中

*2:2010年後半にベータ予定。関連記事

*3:ココについたTimo Elliott氏(SAP)のコメントより