ノーツの効能(5) - ワークフローがノーツをだめにする


今だから正直に申し上げますが、私はノーツでワークフロー・アプリケーションを使うのが好きではありませんでした。


はるか昔*1、当時は一ディーラーの立場で参加していたロータス(株)主催「ノーツ研究会」(っていう名前だったかな?)では、ノーツというまったく新しいソフトウェアの使い道についてアイデアを出し合い各人が試作品を持ち寄って議論していました。そこで私が試作したのはワークフローのアプリだったと記憶しています。メール+文書DB+しかもアクセス制御の考え方がしっかりしている構成のソフトウェア上でのアプリといってまず誰もが思いつくもののひとつがワークフローですが、私は標準テンプレートをちょこっといじっただけの安易なアプリをこしらえて研究会のネタとしていました。


しかしよく考えてみると、ワークフローというのは定型業務です。当時(90年代前半)はPCやらLANやらが普及し始めたころですから、ノーツのようなある意味隙間なソフトウェア*2で手軽にワークフローするのはアリでしたが、ホストのアプリもそれなりに進化し、SAPのような "クライアント/サーバー" 環境で基幹業務をサポートするシステムが発達してくると、ワークフローにおけるノーツの役割は終了です。


とにかくノーツの原点は情報の単位としての文書(ページ)であり情報と情報をつなぐ文書リンクであり、ビューによる一覧性&分類です。さらにここに双方向性(作成者と閲覧者は区別がない -- すべてのユーザーは情報の閲覧者であると同時に発信者となる)が加わっていることで、それだけで、コラボレーションは格段に進みます。ノーツの無い会社に身を置いて3ヶ月とちょっとたちます。入社当初は強烈な違和感を感じながらも「そのうち慣れちゃうかな」などと心配していましたが、やっぱり慣れませんね。共有フォルダーによる硬直化したファイル共有(情報共有にあらず)は、いまだにダメです。(ちなみに生まれてはじめて使った Outlookはすぐに慣れちゃいました)


グループウェアの「3つのC」のひとつ"coordination"はアプリ開発に関連するものではありますが、この能力の乱用は上述の原点部分から少しずつ離れていくものです。ワークフローそのものがだめというよりは、ノーツの真髄はあくまで共同作業の支援というところにあるということを忘れずにいたい、そういう思いを持ち続けています。

*1:ノーツ R3発売前後だったはず

*2:それまでに無かったなにか、という意味です