日本は特別、という話

ほかの業界のことはわかりませんが、ぼくが属している「IT業界」には、グローバルの常識が通用しないことがいくつかあります。日本は特別、なんて言ってたら世界に取り残されるぞ、と指摘する以下の記事を読んでふと思うところがあったのでメモ。

「日本は特別」に固執していては、ロシアのように「時代遅れ」になるだけだ

 

以下で取り上げる2点については、ぼくが所属するようないちソフトウェア(クラウド)ベンダーが日本の特殊事情を変える力などなく、すごく曖昧で不確かな言い方を許していただければ、時間や外圧によって業界が変わっていくことにある程度期待するほかないものです。よって、これらの点については「日本は特別とか言っていたら世界に取り残される」という正論は重々承知の上で、社内では「日本は特別」を強く主張し、グローバル側に理解と対応を求めています。これらをグローバル側に理解してもらうのは毎度骨の折れる作業ですが、これを根気強く続けないとそのための投資が引き出せず、日本だけ情報量や技術習得の機会が圧倒的に不足してしまうことになり、結果としてビジネスへのネガティブなインパクトになってしまいます。

 

ひとつは言語の壁。

 

日本人は英語が苦手です。どうしようもなく苦手です。かくいうぼくも、日本企業から外資系企業に転職したときはTOEICスコアでいえば300点台でした。「英語習熟度」(English Proficiency)のランキングを発表しているサイトがあって、そこを見ると対象国112か国のうち日本は78位です。5段階評価で4番目。最低ランクでなかったことに安心するわけにもいきません。「え、この国より下なの?」と驚いてしまうランキングですので、ちょっと見てみるといろいろ気付きがあります。

www.ef.com

 

ぼくの場合は外資系企業という(かつ業務上も海外とのやり取りが必須な部署で)強制力のある環境に身を置くことによって体で英語を覚えた格好になりますが、日常的に英語を必要としない環境で仕事をしている方からすると、英語を習得するのはなかなか困難です。現在の日本の英語教育には残念ながら期待できませんし(一定の意味はあると思いますが実用面が圧倒的に欠けているのです)、子供のころから英語を学ばせようと自分の子供をイングリッシュスクールに通わせたところで、個人的には弊害のほうが大きいように思っています。

 

最近では翻訳ソフト/サービスやブラウザの翻訳機能が良くなってきているので、英語の読み書きはある程度対応できるようになってきましたが、会話(講義、セミナー含)となるとまだまだバリヤーを感じる方は多いと思います。

 

もうひとつはITシステム導入モデルの違い。

 

海外では(と一括りにしてしまうのは若干抵抗ありますが)、システムを導入するエンドユーザーが主導権を持って自ら手足を動かしながらプロジェクトが進行しますが、日本では(と、日本企業を十把一絡げに呼ぶのも厳密には正しくないですが)エンドユーザーの実現したいことをシステムインテグレーターという別会社に「外注」することが一般的です。導入するシステムに関するスキルやナレッジがユーザー側により多くあるのかそれとも社外のシステムインテグレーターに集約されているのかの違いで、日本は後者の企業がまだまだ多いということです。言い方を変えれば、海外にもシステムインテグレーターは存在しますがシステム導入や運用に関するエンドユーザーとの役割分担が日本とは異なるのです。この点も日本の特異性をグローバル側に十分理解してもらわないと会話がかみ合いません。

 

島国ニッポンは、鎖国を解いてより200年弱経った今でも「日本は特別」と言い続けなければいけない特性が残っています。世界中に張り巡らされたネットが時間と場所の敷居を取り除いた今、そして、「グローバル化」が叫ばれて久しいこの時代にあって、一個人でできることと企業レベルや国政レベルですべきこと、さまざまあると思いますが、ぼくたちはこの「日本は特別」でない状況に一日でも早くたどり着く必要があります。