ウイルスと人類の戦いと共生 ~ 『ウイルスは生きている』、『生物と無生物のあいだ』より

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新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が全世界的に広がり、目に見えない、そして「新型」であるがゆえに 適切な治療法・体勢や薬が確立されない状態でその拡散の勢いをなんとか食い止めようとする日々が続いていますが、そもそもウイルスとは何であるかについて示唆を与えてくれた13年前の書『生物と無生物のあいだ』を思い出し、今一度読んでみました。この本では冒頭で「ウイルスは生物ではない」と早々に断言していますが、一方で、「ウイルスは生物である(と言ってもいいのではないか)」と指摘する『ウイルスは生きている』という本を見つけ、新たに読んでみました。

 

ウイルスが生物なのかそうでないのか、という分類学的な話は、COVID-19との戦いの真っ最中である私たちにとってこの際さして重要ではないと思うのですが、ウイルスの起源や構造あるいは振る舞いを知るという意味においてはこの両書は非常に有益です。とりわけ「ウイルスを知る」という観点からは、『ウイルスは生きている』はウイルスに関する基本的な事項をわかりやすく語っており、素人であるぼくにとってはいくつもの発見がありました。

 

ウイルスは、その宿主の細胞へ侵入し宿主の力を借りて自己増幅をする、その過程において宿主に害となる毒素を発する(毒素の強弱は様々であり、かつ時間とともに変化する)というタンパク質であり、その本体であるDNA/RNAらの核酸を内包するという基本構造だけを聞くと、生物の「外からやってくる」敵であると言えるのですが、一方で、当初は外的として侵入してきたウイルスがその「痕跡」を生物の体内に残し、かつ、あろうことかその生物の進化に欠くことのできない「功績」を残していくという歴史的事実もある、という点が興味深く、好奇心を刺激されました。同書の著者が「ウイルスは生物である」とあえて主張する背景は、この、「生物の進化の一部としてウイルスは組み込まれている」という事実からなのですが、COVID-19と戦っているさなかのわたしたちにとっては、前述のように生物かそうでないかはどうでもよく、第一次大戦下に世界中で大流行したスペイン風邪以来とも言える人類にとっての大きな脅威とどう戦っていくかが一人一人に課せられた非常に大きく重たい課題です。

 

「敵を知る」意味においては同書は非常に有用なのでこの機会に読んでみることをおすすめしますが、ウイルスの流行は誰か他人が止めてくれるものではないので、「早く収束してほしい」と願うだけでなく、自らが「収束させる」という強い意志をすべての人が持って行動するという意識改革をもって立ち向かっていかなくてはいけない事態であることは忘れてはならないと思います。

  

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

  • 作者:福岡 伸一
  • 発売日: 2007/05/18
  • メディア: 新書
 
ウイルスは生きている (講談社現代新書)

ウイルスは生きている (講談社現代新書)

  • 作者:中屋敷 均
  • 発売日: 2016/03/16
  • メディア: 新書
 
ウイルスは生きている (講談社現代新書)

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