富士通のHDD事業売却について


富士通がHDD(ハードディスク駆動装置)事業を米ウエスタンデジタルへ売却、というニュースが報じられていますが、数年前のIBMでの記憶 (当時私は、ストレージ事業部に在籍していました) がよみがえります。事業部ごとごっそり身売りしちゃうわけだから、従業員は買った側の会社へ半ば強制的に転籍させらることになり、従業員と会社の間では結構もめます。IBMの場合、協力関係にあった日立への売却だったわけですが、今回のケースでは売り先がHDDで実績ある企業とはいえ、なにせ米国の会社なので、長野や山形の工場で勤務されている日本人社員の方々は大きな不安を持って、でも選択肢はなくて、という状況でしょう。


たしかに、HDDそのもの (業界では「タマ」と呼びますが) って、もはや IBM富士通といった総合IT企業が抱えるには採算あわなくなってきているんでしょうね。富士通のHDDは年間売り上げが3,300億円を超える額なのに赤字は出るしコモディティー化は加速するしってことで、需要は高まる中での苦渋の経営判断だったんだと思います。


余談ですが、IBMがHDD売却をしたときに必ず受けた質問は、「IBMはディスクストレージやめちゃうんですか?」というもの。「とんでもない。商売は好調ですし、今後もガンガン強化していきますよ」と答えたものですが、いわゆるディスクストレージ装置とHDD (タマ) は要素としては分けて考えることができて、「HDDやめた」ということと「ストレージもやめる」ということは意味が違います。ディスクストレージ装置ってやつは、「ハードディスクの親玉」ではなく、「コンピュータそのもの」です。実際、IBMの大型ディスクストレージ装置は、同社の Unix サーバーと基本構成は同じです。アクセススピードや信頼性を追及するのがパーツとしての HDD の役割で、ストレージ ( = データ格納庫) としての全体パフォーマンスや各種機能、接続性・拡張性などを提供するのがディスクストレージ装置 ( = ストレージ制御に特化したサーバー機) のお仕事。

補足:当エントリーは報道に基づくものですが、渦中の富士通は2008年10月2日時点でこの売却話を否定しています。

2009年1月14日現在、売却先は東芝である、という報道がなされています