メーカー指定価格と日本家電のサガについて

かれこれ30年は使っているダイキンのエアコン、まだまだ現役でやってくれそうなのですが、さすがにそろそろ引退させてあげないとかわいそうかな、ということで、買い替えを決意。と同時に、我が家の生活の質を劇的に向上させてくれた食器洗い乾燥機(三代目)が11年目に入り、最近怪しげな音を発するようになったので壊れる前に新調しようということで、近所でひいきにしている家電量販店を訪れました。

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エアコンの方は、まあこの辺のモデルだよねーなどと店員さんと会話しながらスムーズに選定が進んだのですが、食器洗い乾燥機(あいかわらずパナソニック寡占市場)売り場の前で、見慣れぬ値札表記に遭遇し、一瞬、イッタイナンダコレハ、と。その表記とは、冒頭部分の写真にある「メーカー指定価格」というやつです。

 

メーカー指定価格

 

店員さんに、何ですかこれ、と尋ねると、ああこれですね、これはメーカーが指定した価格でしか販売ができないことになっていまして、つまり、値引きができない商品なのです、という説明が。ぬぬぬ、メーカーが小売店の販売価格を指定するなんてのは独禁法違反なのではないか?それを堂々と値札表記してしまうなど何たることだ、と正直かなり驚いたのですが、その若い店員さんが続けて、メーカーさんの方が在庫リスクを持ってくれて、つまり、返品可能なわけですね、そんな条件があってのことで、どうも独禁法には抵触しないらしいす、とのこと。

 

ほほう。合法なわけだ。ということで、ネットでざざっと調べてみると、たしかにメーカー指定価格なるものは存在していて、すべてのメーカーが取り入れているわけではなさそうですが、メーカー側にも言い分があり、これって、日本家電の抱える性(サガ)に通ずる話なのだな、と思いました。

 

以前から、毎年毎年(場合によっては季節ごとに)細かい機能アップを取り入れながら家電というハードウェアが「バージョンアップ」を重ねていることに対して違和感というか、不可解な感覚を持っていました。こんなに頻繁にバージョンアップを続ける必要があるのか?これって日本だけじゃないの?などといった感覚です。

 

ソフトウェアの場合はその「実体」はデジタルですから、バージョンアップを頻繁に行ったとしても家電業界が向き合っている製造、流通、在庫などを的確にコントロールしていかないといけないという物理世界ゆえの難しい問題はありませんが、家電メーカーにとっては利益に直結する最重要課題なわけです。そのことと、「値引きは当たり前」(しかも結構な%の値引きが常態化)という家電の世界では、新製品の売れ行きがピークを過ぎるといわゆる「値崩れ」が起き、それを改善するためにメーカーとしては新商品をこまめに投入して適正販売価格(と利益)を保つ必要性があった、という背景があり、「メーカー指定価格」なる取り組みを始めたらしいのです。

 

このメーカーの言葉をそのまま受け止めると、次々と投入される家電の新製品は行き過ぎた値引きをある程度コントロール(メーカー目線であまりいい表現ではないかもしれませんが、実態を表しているとは思います)するためにやむにやまれず行ってきたことであり、一見独禁法に抵触するように見える「メーカー指定価格」は小売店側も在庫処分のための過激な値引きや競合店との熾烈な値引き競争で利益を圧縮してしまうことを避けられる、というメリットがあるようです。

 

もちろん、家電のバージョンアップは常態化した値引きを適正化するためだけではなく、純粋に、常に改善し進化を続けることによる競争力・商品力強化という目的もありますので、今後も続いていくのでしょうけれども、何事も程度問題ということで、こう言っては何ですが、バージョンアップを頻繁に、一定の間隔で続けていくという世界は、少し見直しがあってものいいのかもしれない、ということを今回「メーカー指定価格」の存在を通じていろいろ考えた次第。