白鵬と照ノ富士の目について

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令和三年の大相撲名古屋場所、千秋楽は、六場所連続休場明けで膝に故障を抱える横綱白鵬と綱取りをかけた執念の復活大関照ノ富士の全勝対決という、近年稀に見る盛り上がりを見せた結びの一番で幕を閉じましたでした。以前、『福原愛選手の目について』というエントリーを書いたことがありましたが、今日の取り組みでの二人の目もまた、静かで涼しげな中にも燃え上がる心の内が感じられる凄みがありました。

勝負は、白鵬の全勝優勝。優勝インタビューで「膝がボロボロでいうことを聞かなかった」とコメントしていましたが、白鵬の勝利への執念が「執念の復帰」照ノ富士のそれを上回った取組だったということでしょう。勝利の瞬間の土俵上でのガッツポーズは相撲という競技においてどうなんだという意見はあるかもしれませんが、顔を最大限に紅潮させた決着直後のシーンは、あの有名な平成十三年夏場所の優勝決定戦で武蔵丸を破った(今回の白鵬と同じく膝に故障のあった)貴乃花の鬼の形相を思い出させるものでした。

 

白鵬にとっては、長い休場明け、故障、年齢、様々なものが頭の中を駆け巡り、四十五回の優勝の中でも特に記憶に強く残る十五日間だったのではないかと思います。負けた照ノ富士は悔しさいっぱいだと思いますが、来場所からは横綱として、ぼくたちをまた楽しませてください。