今年一番の試合(ATPツアーファイナルズ 2015)


今年最後の大会で錦織君がすばらしい試合を見せてくれました。フェデラーに勝つことはできませんでしたが、今年一番ではないかと思える充実した内容で見ていてとにかく楽しく、試合の模様をブルーレイに永久保存してしまいました。


夏の全米オープン一回戦で予想外の敗戦を喫したあたりからおやっ?というプレーが増え始め、その後も故障や棄権なども重なり歯車が狂ったように錦織君らしくない試合が続いていましたが、それでもなんとか勝ち取った栄誉ある『ツアーファイナルズ』への出場権。ATP年間ランキング上位8人だけが参加資格を得るこのツアーファイナルズの前半戦は4人ずつに分かれての総当たり戦ですが、錦織君が入った組は現役ダントツ最強のジョコビッチ、テニス史上最高プレーヤーとの声も高いフェデラー、そして錦織君よりランキング上位のベルディヒ、といったかなり手強い面々。組み合わせを見たときは「よりによってジョコビッチフェデラーか!」と思いましたが、フェデラーとの最後の試合を見終わった後は、ああ今の彼には最高のメンバーと試合順だったのだな、と得心しました。


初戦のジョコビッチとはスコアこそ1-6 、1-6と惨敗でしたが、調子落ちや故障、ブランクなどなど考慮すると復調の兆しの見えたいい試合に見えました。こう言ってはなんですがほとんどの人が勝てないだろうと見ていた試合がゆえに逆に力が抜けてここ最近には見られなかった集中力があったように思います。初戦としては最高の相手だったのかもしれません。この試合で錦織君は復活の手応えを感じられたと思います。

ジョコビッチ戦を見た後の感想ツイート↓)


第2戦は、ランキングこそ錦織君より上ですが相性の良い(過去の対戦成績で勝ち越しています)ベルディヒジョコビッチのような完全無欠さもなければフェデラーのような多彩なテニスを展開するわけでもなく、ただ「安定して普通に強い」(それはそれですごいことなのですが…)のですが、こういう選手と錦織君は試合がかみ合います。まだまだ本調子でなかった錦織君も、ジョコビッチ戦でつかみかけた自分らしさを「かみ合う」相手との試合を通じてさらに手元に引き戻すことができたのではないでしょうか。

ベルディヒ戦直後の感想ツイート↓)


自信と調子を取り戻した錦織君が臨んだ天才フェデラーとの第3戦は、とにかく楽しい試合でした。両者とも攻守のバリエーションがテニス界屈指。勝負というよりはお互いが最高の技を披露しあっているというアートのような展開で、テニスのおもしろさを存分に見せてくれました。

フェデラー戦直後の感想ツイート↓)


勝負事としては錦織君の惜敗だったもののプレーヤーとしてのレベルはまだフェデラーの方が何枚も上手だなあという印象は拭えません。しかし、大舞台で戦っているというのに彼にしかできない「お茶目だけれど芸術的なプレー」を見せる少年錦織と「瞬時の判断と鋭い攻撃力」で相手を圧倒する世界トップランクプレーヤーKEI NISHIKORIが同居する錦織君のすばらしさを彼自身が思い出すことができたのは、相手がフェデラーだったからなんだと思います。