『48億の妄想』の想定を超えたライブストリーミング世界

saitokoichi2010-02-07



ライブストリーミングがすごいことになってきました。単なるネットを使った生放送というだけでなく、Twitterと連携することによって送り手と受け手がライブで直結してしまうのです。これはすごい。


さらに、モバイルデバイスによる生放送が手軽にできるアプリケーションの登場により、情報の伝達、報道、コミュニケーションに大変な変革が起きそうな予感がします。モバイルからのライブストリーミングといえばまず『Ustream Broadcaster』があげられますが、最近登場した『TwitCasting Live』がかなりイケています。破壊的に簡単で高機能、しかも無料!*1 詳しくは@kengo さんのエントリーなどをご覧いただくとして、このようなアプリのおかげでiPhoneひとつあれば*2世界中が放送拠点になるのです。しかも、Twitterをミックスした双方向ワールド。みんなが放送局


そんな状況を見ていてふと思い出したのが筒井康隆さんの処女長編小説『48億の妄想』。筒井作品ですから、突飛な設定を置いたあと話が雪だるま式に膨らんでいき最後はドタバタ戦争で締める、という必殺パターンで展開していくのですが、その設定が「みんなが放送局」的な今の状況に重なるのです。


その設定とは、世界中に「テレビ・アイ」という小型のカメラが(多くの場合隠しカメラのように)設置されていて、人々は常にカメラを意識した生活を送り、少々の刺激では満足できなくなった民衆を相手にテレビ局は演出をどんどん大げさにしていく、というもの。作品ではカメラは静的に設置され、集約した映像を使ってテレビ局が番組を構成しているのですが、今ぼくたちの前で起きているライブストリーミングの世界はデバイスを持っているひとすべてが放送の拠点になると同時に番組への参加者になってしまうわけで、その意味では、荒唐無稽と思われた同小説の世界観を軽く超えてしまっているとも言えるでしょう。


『48億の妄想』が書かれた1965年(!)にはネットは影も形もなかったので、さすがの筒井さんもここまでの世界が来るとは想定外だったのではないでしょうか。

参考: iPhone で映像の配信をしながら Twitter への投稿もできる、TwitCasting Live (GOING MY WAY)
http://kengo.preston-net.com/archives/004438.shtml

*1:2010年2月6日現在

*2:Ustream BroadcasterはAndroidなどへも対応しています